2018年10月04日

西側陣営の政策を地政学で考察する【イデオロギーシリーズ-4-】



今回は「社会主義と共産主義シリーズ」の第4段で、西側の共産主義陣営は上手く行ったの可能考察となります。

・・・はい!

"西側の共産主義陣営"と書いています。

これは書き間違いでは有りません。

じつは前回の二項目でも「★冷戦の悲惨な社会主義国家と"安定した共産主義国家"」と書いています。


関連リンク:イデオロギーシリーズ


これに関しては、冷戦当時の西側陣営諸国の経済政策や税制を確認して見ると、共産主義思想が随所に確認できるからです。

皆さん勘違いしている人も居るかもしれませんが、自由主義だろうとも、資本主義だろうとも、共産主義だろうとも、社会主義だろうとも、既にある資本から捻出したリソース(余力)を現在の産業の生産性を向上させるインフラ投資として投入する行為は、余剰リソースを資本に投資する投資行為となり、これは資本主義思想となります。

国家が民間の自由意思に任せるか? 計画的に行うか? によって、自由主義路線に成るか、社会主義路線に成るかが変わるだけなのです。


★冷戦期の西側諸国の代表例

上記に書いたように冷戦の頃の西側諸国の経済政策は、確かに資本主義を基本にしたものでしたが、税制度による再配分を見た場合、共産主義の思想が多々見て取れます。

とは言っても同じ西側諸国でもその政策には若干違いが有りました。ココではその違いを考察しようと思います。


アメリカ合衆国:冷戦期の米国は、北米大陸を制し、世界の海に干渉できる超大国でした。国境は、北にカナダ、南にメキシコが有りますが、米国の国力が圧倒的過ぎて相対的に無視する事の出来る存在だったため、陸軍負担はそれ程では有りませんでした。

ただし世界の海に出てこようとするソ連の圧力を何とかしようとする為に、ユーラシア外円部の同盟国に派遣した駐留軍の負担や、軍事技術開発の投資負担が、経済情勢を悪化させる要因として働きました。

それでもなお経済が持ったのは、第二次世界大戦と、その前に築いた対外投資を切り売りしたり、同盟国からの資本還流が有った為でしょう。

そして此処からが本題なのですが、大恐慌以降、貧富の各がさ広がっていた米国ですが、世界大戦が始まって以降、高所得者への増税による富の再配分を強化し、戦後の冷戦体制期までその状態を行った為、冷戦初期頃まで貧富の格差は縮小して行きました。

その後、民間の消費力が膨張し、あっという間に対外貿易赤字国に転落してしまいます。その為、ドル紙幣よ必要以上に刷り海外にばら撒く事になり、ついには金本位制を維持できずにブレトンウッズ体制を終了させました。

そのため紙幣が金(ゴールド)とリンクされなくなり、通貨価値維持のための政策を行わざるを得なくなったため、民間の消費力を減らしたりするための格差拡大政策を行い始め、戦中から続く税制度面での共産主義政策は終焉を迎えたのです。

当然の事ながら米国は一貫して計画経済などは行ってはおらず、自由主義経済における経済活動から発生した富の再配分を操作しただけで、ソ連型社会主義的な事は行っては居ませんでした。


欧州:欧州、この場合は主に西欧ですが、この地域は第二次世界大戦の影響で、戦争を仕掛けたドイツも英仏もボロボロに成ってしまいました。これら西欧諸国は、気候的に安定していますが、共産主義陣営とは国境を接していたため本来は、軍事的な負担が生じてしまいます。

しかし米国と同盟を組み安全保障上、米国の傘の下に下る事により負担の少ない状況を作り上げ、米国と同じような高所得者に対する高税率を適応させる事により、富の再配分と戦後の復旧の為の人員リソース捻出に成功します。

最もその結果は各国によって違っており、軍事負担のほとんどないまっさらな状態からの復活であった西ドイツは、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、あっという間に復興してしまいます。

逆に英国は、第二次世界大戦の時の負債の多さから、既に出回っていたポンドの回収に努める政策を取った為、「資産を売却しても赤字、増税しても赤字」となり、投資のためのリソースを捻出できず、スタグフレーションに落ちると言う悲惨な経済状況に成り、英国病と言われる状態に嵌り込みました。

フランスは丁度その中間ですが、海外植民地を守るために兵を派兵しても敗戦続きで、経済とは違う部分でパッとしない国に成り下がりました。しかも、もともと工業力と言う点では、英独の後塵を拝しておりドイツほどの復興は成し得ませんでした。

とは言え西欧諸国は一応のところ、戦後の富の再配分政策の成功と米国からの借款によって復興し、最終的には先進国に返り咲きました。・・・が、米国と同じく後々に、高所得者に対する高税率を廃止し、格差拡大政策を取る事になりました。

有名なところで、世界的な格差拡大政策の先駆けを切った英国のサッチャー政権が有名なところです。この政策によって、後に米国のレーガン政権も続き、世界的な格差拡大が始めるのです。

なお各国共に比率は別々ですが、自由主義と資本主義を経済政策に採用しており、自由に経済活動は行わせ、資本主義の経済システムを採用しつつ、税制的には共産主義的な政策を行っていたと言うのは、各国共に共通していた事です。(冷戦の終了でそれも終わりを迎えましたが・・・)


日本:日本はユーラシア大陸の東沿岸部に存在している島国で、四季に彩られた豊かな国である。冬季の食糧生産力は夏季に比べて劣るが、海洋資源もあるため食料関係で困る事は少ない国と成っている。

島国であるため陸上国境を有してはおらず、その点も軍事力を必要以上に拡大させる必要が無い状況を保障している。第二次世界大戦後、米国と安保条約を結び「軍事費GDP比率1%」と言う超低軍備ともなっており、先進国であるにもかかわらず、世界屈指の軍事負担の少ない国と成っている。

第二次世界大戦後、GHQによって財閥を解体されたり、農地改革により小作人が土地持ちになったりと、生産設備資本の労働者への移転が進み、更に高所得層に対しての西側諸国屈指の高税率により所得の再分配が行われました。

更に国土開発も自国より進んだ米国を手本にし、成功している部分を真似る事によって、低コストでの投資でキャッチアップに成功しました。

また西側諸国(元列強)の中では低所得の国でもあった為人件費がかからず、他の先進国(特に米国)と貿易すれば低価格品の輸出で貿易黒字を稼ぐ事が可能となり、ドル円を交換する事による通貨の安定発行が出来る事となりました。

この「低賃金の加工貿易による貿易黒字確保」と「日米安保による軍事負担の低減」と「既に成功例のある産業に投資行う、効率的なキャッチアップ投資」に加え「米国からの戦後復興資金と技術の援助」もあった為、安定した貿易と通貨発行が出来た。

そうして稼いだり発行したマネーを公共事業等に積極的に使用し、高所得層に対する高税率による再配分により国民全体の所得が爆発的に膨張し、更に通貨高もあって消費力も高まる事によって、人類史上でも最も裕福で格差の少ない先進国となりました。この状況は冷戦末期まで続き、「米国の次の覇権国は日本である」と言う識者まで現れるまでになった。

これらの当時の日本の状況を見た社会主義国の指導者であるゴルバチョフ大統領は、日本を指し"史上最も成功した共産主義国"と皮肉ったほどである。

この事発言は正にその通りで、冷戦が終わるにつれ格差拡大政策に舵を切ってはいたものの、日本の行っていた政策こそ、かつてカール・マルクスの提示していた共産主義で相違なかった。

この日本式共産主義政策も冷戦の終了とともに始まるグローバリゼーションの到来によって終結を迎えたのである。


結論:以上の事から冷戦が始まり終わるまでの間、西側諸国で採用されていた共産主義政策(ソ連式社会主義政策では無い)をミックスした資本主義政策は、戦争によって荒廃した各国を復興させ、更に貧富の格差を縮小させた形での経済発展をもたらす事に寄与したと言えます。

ここで重要なのは、先の大戦終結のどさくさに紛れて生産資本の労働者への移転を行い、更に自己の資本を持つ事を許可した上で、所得の再分配と言う形で格差の縮小に努めた為、戦後の復興投資で拡大した産業能力によって生産された商品やサービスを、より多くの人が消費できる状況となり、西側諸国の発展に繋がった事が重要なのだと考えられます。

しかし闇の部分もあるもので、多くの人が急激に豊かになった為、ソレにより人口も爆発的に増加し、特に所得の高い先進国から、国民の消費力の増加により対外輸入が増大し対外貿易赤字が増え、通貨価値が維持できなくなる現象が起き、これによって経済の不安定化が起こりました。

特に日本を除く西側諸国に言える事なのですが、対日貿易赤字が拡大し過ぎて、自国の産業が脅かされる状況を招いたため、これ以上人件費高騰を誘発する政策を行えなくなった事も共産主義政策を終了させた原因と思われます。

結局それら過剰な消費を抑える政策として格差拡大が行われ、その状況は現在まで維持される事になりました。

日本は他の西側諸国と比べると、最後まで共産主義政策に近い事を行いながらも国際的な競争能力を維持し、各国の産業に大打撃を与えて居ました。そのため西側諸国で成功していた共産主義政策を破綻に追いやったのは、日本の圧倒的な産業競争能力であったとも言えるのでは無いでしょうか。


★海を味方につけた西側陣営

西側諸国が東側諸国に勝利できた理由を見ると、ある程度共通点が有ります。


それは「米国と同盟を組んでいた」事です。


もっとも重要なのは、米国と言うより米国の支配していた海洋ネットワークの貿易構造に組み込まれその恩恵を受ける事が出来たと言う事です。

海洋貿易と言うモノは、陸上の交易と比べると「浮力」と言う物理現象を利用し、滑るように水上を移動しながら大量の物資を輸送できるため、コスト面で陸運より圧倒的に低コストなのです。

この低コストによる資源の大量確保と輸送こそが、共産主義政策を成功を導き西側諸国を繁栄させ米国に過剰な軍拡を行える力を与えた最大の要因とも言えるでしょう。その点で冷戦期の東側諸国には、最初から勝ち目などなかったとも言えるのです。

海洋ネットワークを介しての安価な物資確保を行えなかった東側諸国は、米国との軍拡を行うも常に過剰な通貨発行によるインフレに悩まされ、更に盟主国であったソ連の民間需要を無視した独裁的な計画経済の失敗によって、ついに通貨価値と産業を維持できずに、内部から自壊したと言えるのです。

------------------

以上でイデオロギー関連記事の第四回目を終了します。


文化文明の発展と社会の変化でイデオロギーがどの様に変化しているのか、イデオロギーや政策の変化で富や資本が如何にして循環するのかの考察となります。

続きは次回へ!


面白かったらポチっ!

とリンクをクリックしてね♪

    ↓


国際政治・外交ランキング

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村


nh01ai33 at 08:00地政学 | 社会
プロフィール
ブログ主:無責任野郎
職業:今、無職

参考にした文献の著者
およびチャンネル、ブログなど

≪チャンネル≫
 地上波テレビ
 チャンネルグランドストラテジー
 THE STANDARD JOURNAL2
   アメリカ通信
 チャンネル桜
 虎ノ門ニュース(DHCシアター)
 国際政治チャンネル

≪経済評論家≫
 三橋貴明 氏
 藤井聡 氏
 上念司 氏
 渡邉哲也 氏

≪戦略家≫
 エドワード・ルトワック 氏
 孫子(兵法書)

・コメント欄について
 閲覧者様方のコメント入力フォームを削除させていただきました。
ランキング

国際政治・外交ランキング

ためになったらポチっ!
とリンクをクリックしてね♪

にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村
記事検索
  • ライブドアブログ