2019年01月29日

2-大戦略で考える流動性の制御


本日は前回から続く、「水の比喩で見る大戦略」の続きに当たる「大戦略で考える流動性制御」でお送りいたします。

前回の水の比喩とは、孫子兵法に記されている、兵(軍隊)を水に例えた比喩で、「戦争等で軍隊を運用する時は、物理法則や人間の心理の法則等の影響を受けるため、ソレを予測し自軍と敵軍を自分の都合の良いようにリアルタイムでコントロールすべし」と言う意味を述べた比喩で、あらゆる情報を分析し利用した、あらゆる力の制御こそが戦略の大本道であると言う事です。

これは用兵の事だけでは無く、国家を運営し国際社会での生存戦略を行う事についても同じことが言えます。

今回は、そのあらゆる力の流動性の制御の観点から、大戦略とは何なのかを考察してみようと思います。

そして前回の最後で述べた様に、この大戦略を考える時は、生き残りこそがその根底にある最大の目的である事を認識し、それを前提に「可能性の現出」と「価値、技術(機能)の組み合わせ」と「流動性の制御」を取り上げさせてもらいます。

なお記事は、今回だけでは収まりませんので複数回に分かれると思われます。

2-大戦略で考える流動性の制御≫(←この記事)

★国家における流動性の制御とは?
では国家における流動性とは何なのでしょうか?

これには色々のモノが有りますが、まず代表的なモノが「お金(マネー)」が取り上げられます。このマネーと言うモノは、人類に文明社会が始まってより最も流動的なモノの一つで、食糧の様な腐るモノでも無ければ、情報の様に劣化するリスクも少なく、現代のインターネットの発達した国際社会でも、最も流動性のあるモノの一つでも有ります。

お金を貸したり借りたり、政府の増税により経済活動に影響が出たり、銀行業務によって信用が膨張したり、他にもあらゆるモノと交換される事によって、工業製品、食糧、人材、燃料等のあらゆるモノに変えられ世界中に循環しています。このマネーの流れと、価値を制御すると言う事は、マネーの取引によって影響を受ける諸々の事象に影響を与える事になると考えられます。

無論、先に述べたマネーと交換できる「「工業製品、食糧、人材、燃料等の様々なモノ」も生産され消費される事によって、国家の活力になる流動性のあるモノ」と言う事も出来ます。


そしてもう一つ重要な事が「軍事力(パワー)」で、これは国家の安全保障を守るだけでは無く、国際社会における利権を軍事力を含む外交交渉で守る力も含んでいます。

当然そこには、他国を威圧したり侵略する力と言う意味も有し、その影響力は周辺国に反発と言う形での反発力的な軍事力を招く恐れもある、流動性のあるエネルギーとも言えます。


更にもう一つの事が「心(マインド)」で、これは国家を構成する国民やそれを指導する政治家の行う事に影響し、時にはこのマインドによって「どこの国に「投資するのか」や「侵略するのか」や「有効的付き合いをするのか」にも影響するため、他の流動性のある事柄に影響するモノである」と考える事が出来ます。


そして最後に「人」で、これは人の移動や人口の増大と言った事柄で、その国の生産力や消費力の増大や、民族大移動の様な難民が起これば、国際的な混乱にも結び付きます。そのためお金が生まれる以前の古来より流動性のある存在と言えます。


これ以外にも、人類にはコントロールし難い「自然環境」、大気や海流の流れ、自身や火山活動、台風や洪水、干ばつ、更には気温等も流動性のある存在と言えます。ただし、この自然環境に関しては、人間ごときがコントロールしようと考え実行しても、手痛いしっぺ返しを食らうのが目に見えていますので、基本的に起きた事象を受け止め、対処するしか有りません。


★膨張と噴出、激突と可能性、縮小と巻き込み
では国家や民衆が生み出すエネルギー(力)の流れと言うモノは、どの様に生み出しどの様に流れ、時にはどのように衝突し自己や周囲に変化をもたらしてゆくのでしょうか?

まず国家を維持する人口や産業を一つのエネルギー体と考えた場合、その共同体に外部からエネルギーが投入された時、その共同体の有する生産力や消費力が増大する事が有ります。

この上記の事象が「膨張」で、この国家的力の膨張は「外国と言う外部だけでは無く、今現在社会体制を維持を構成しているモノ以外の新たなる資源やエネルギーが発見され投入された時にも起こる現象」で、この現象が起こると一時的に生産力や消費力が増大する事になります。

しかし拡大の原因になっている存在(新資源や海外からの投資)の国内消費に対する供給の相対的縮小が生じると、生産と消費が維持できずに、その生産力と消費力を維持するために、外部に向かって生産力と消費力を放出しなけれけば成りません。

これが膨張から発生する「放出」で、国家で例えると「生産力と消費力の帳尻を合わせるために、増大した生産力で生産されたモノやサービスを海外に売りつけ外国で稼いだ金銭を持って海外の物資を購入し、自国の増大した消費力の維持に充て、更に国内で賄いきれない消費力を移民と言う形で外国に送り出す」と言う行動に当たります。

このエネルギーの膨張は、何も国家における生産力と消費力だけでは無く、「感情に注がれる正や負のエネルギー」などと言った物質的なモノ以外もこれに含まれる事になる。


そして、それらの放出された各エネルギーの流れは、発生元以外の外部領域に流れ込み、その外部領域に存在している同質の存在と交わると対立や友和等の各事象に発展します。

例えば、増大し過ぎた生産力で生産されたモノを外部に流せば、そのモノやサービスを受け入れる領域で「同じモノやサービスを生産している人達」は、ライバルの出現で負担が生じる事になります。小規模のある程度の競争であれば、受け入れる側の人の努力を促したり、消費側の消費コスト削減になるため、恩恵が有る事は認めれるが、不必要に受け入れる量が多すぎれば、過当競争や所得の減収からなる受け入れ領域の人達の負担になります。

更に過剰消費に当たる人員の削減を目的とした放出が行われると、それを受け入れた領域に住む人達の生産力が、流入した人達の為に使用される事になるため、受け入れ領域の人達には負担ともなります。これは人口だけ増やした途上国の人が先進地域に潜り込み、その土地の人達に迷惑をかけながら生きる様な事例がソレに当たります。

無論、流入した人達の生み出す生産能力が、受け入れ領域の人達の生み出す生産能力を平均的に超え、且つ受け入れ国の通貨と物価がインフレ状況にある場合は、受け入れ領域の人達が受け取れる恩恵が大きくなる為その限りでは有りません。これを人類の大移動に例えると、文明の発展した地域の人が、未開地域の人達の住む土地に移り住み、その地域の人達の為に尽くすなどと言った事がソレに当たる。

これは国家における「生産と消費を行う人的資源の領域外放出」と言う観点から説明しましたが、感情の放出と言う視点から見た場合、国家におけるナショナリズムの高まりやから発生する周辺国への影響などと言った事象も、感情面におけるエネルギー放出から生じる可能性の発露と言えます。


では「縮小」とは何なのかと言うと、縮小とは文字通り「内包しているエネルギー量の低下からなる規模の縮小」を意味しています。

国家等の存在は、内包するエネルギーの原資になる存在が少なくなればなるほど、その存在がエネルギー密度が希薄なり、希薄した部分を埋めるに周囲のエネルギーが中心の最も必要とされるところに集中し、その存在が存在であろうとする根源を守ろうとします。

生物で言えば広がり過ぎ維持できなくなった勢力が管理できる範囲で縮小したり、体の一部を退化縮小する事で最適化する様な事で、当然国家においてもその事象は成立します。

更に「巻き込み」は、上記の縮小という事象が生じる過程で、その存在が縮小した時の生じる空白地帯に、周囲の存在(エネルギーや勢力)が流れ込む事象である。

無論、この流れ込んで来るエネルギーや勢力は、内部エネルギーを維持できずに噴出させるほどに膨張している存在がその対象となり、例えるなら古来から国家の興亡における「国が一つ自壊もしくは縮小したら、周囲の膨張する国が、自壊したり縮小したりして規模の小さくなった国の元支配地域に進出する」と言った生存圏拡大の構図が、ソレを指しています。これは別に国家だけでは無く、自然界の弱肉強食や自然淘汰で生じた、空白下若しくは希薄化した領域に侵入する新たなる個体の例もソレに準ずると考えられる。


これら各種エネルギーの「膨張と放出」「縮小と巻き込み」「激突と可能性」等の事象が、多くの国が古来から行い行われてきた生存戦略の根源に位置する事象で、これを認識できているかどうかで、その国の生存力が決まると考えられます。

どの存在が膨張するのか?
どの存在からどの様な力(エネルギー、感情、軍事力)がや放出するのか?
その放出された力がどの様な指向性を帯びるのか?
力の向かった先でどの様な事態が生じるのか?
反発なのか? 融合なのか? 混乱なのか?

どの存在が縮小するのか?
縮小した時に生じる空白or希薄にどの様な力が流れ込むのか?
流れ込んだ力で受け入れた存在がどの様な変化の可能性が表に出るのか?
可能性とは、反発なのか? 融合なのか? 混乱なのか?


何処の国を、どの様な存在を、膨張させるのか?縮小させるのか?
その膨張の為の原資となるエネルギーは何処から来るのか?
もしかしたら自分達の国が、そのエネルギーを注ぎ込んでいるのか?
そのエネルギーは、どの様に捻出しているのか?
もしかして国民を犠牲にして捻出しているのか?

この「エネルギーの捻出と注入による対象の膨張」と「エネルギー喪失による自己の縮小による、周辺の巻き込み」と言った行いが、正に戦略における"コントロール"と定義される概念で、このエネルギーのコントロールこそが「流動性の制御」なのです。


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以上が、大戦略で考える流動性の制御の概念的な考えに成ります。

より詳しい事は、次回に回します。

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