2019年03月18日

中南米は何故没落したのか?

今回の考察は、「中南米諸国の没落」に関しての一考察となります。

中南米と言えば、第二次世界大戦直後までは、世界でも豊かな国の集まりでしたが、冷戦が始まってから今日まで没落の一途をたどり、先進国と呼ばれる国家は消え失せてしまいました。

近年でもアルゼンチンのデフォルトやベネズエラの経済的な破綻など数多くの経済混乱に見舞われています。

かつての先進国は、何故この様な現状に陥ってしまったのでしょうか?

それらの事象を考察するに値り、そもそも何故南米諸国(主にブラジルやアルゼンチン)が第二次世界大戦頃まで繁栄したのかを確認する必要があると思われます。


★戦前における中南米の繁栄
南米大陸は人類史において、人類が生存可能な一定以上の面積を有する陸地において最後にたどり着いた大陸となります。(南極で真面に生きるのは無理ですので・・・)

そして文明発祥地である中東から「古来から使用されたいた徒歩などによる移動可能な輸送手段」を利用しての進出や交易では、最も遠方であり、最も取り残される恐れのある地域でも有ります。

そのため西欧における大航海時代の始まりに至るまでの間、氷河期に現在米州の先住民と言われる人達が北方経由でたどり着いて以降、殆ど旧大陸との接点が無く、独自の文化を築いていました。

この状況が変わったのは、先に述べたスペイン・ポルトガルのイベリア半島国家が大航海時代に入り、欧州人視点による米大陸発見をして移民の入植を始めてからとなります。

これにより欧州式の貨幣経済が南米を始めとする米州大陸に広まり始め、そのルール内で優勢な生き方を出来るヨーロッパ人が繁栄する事になりました。

それ以降、欧州人による現地先住民の迫害や殲滅など数々の悲劇が有りはしましたが、1800年代に入るまでの間に植民地だった地域から国家が成立するにたる人口や文化が育まれました。

そして経済的な問題は、貨幣制度が広がりグローバル経済と深く結びつき、南米を諸国を始めとする米州が世界と密接に関わり合いに成ってから起こり始めた様なのです。


南米諸国成立から繁栄までの道のりは、

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1800年以前
スペイン・ポルトガルの影響下で入植によるプランテーション

1800年代初頭
ブラジル帝国の成立や南米各国の独立からなる混乱

1800年代後半
イギリス資本の影響下に入る(イギリスの非公式帝国の一部になる)
これによって世界経済にアクセス出来る様になり安定化する

1912年頃
世界大戦
安全地である南米に人口と資本の流入

1928年頃
世界恐慌

1940年頃
第二次世界大戦
戦争の特需
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この様に成っている。

上記の年表を見てもらえば分かるが、欧州が大航海時代に突入して以降、南米に入植した人による勢力の拡大と自治権の拡大が、1800年代に生じた国家独立によって最大化され、1800年代後半の大英帝国の非公式帝国化によって安定を迎える事になりました。

この大英帝国の影響下に入る事による世界経済へのアクセスによって、南米各国はかつての宗主国であるスペイン・ポルトガルに対して自立した安定を手に入れたと考えられます。

しかし、その安定した状況も第一次世界大戦による、英国のアメリカに対する赤字拡大によって不安定化し始める事になります。

ただし、この頃の米国は「当ブログでも述べているユーラシア諸国に対してのバランシング戦略」を活発化させ始めた頃で、欧州情勢も次第不安定になってゆく事になるため、相対的に中南米は安定していたと言えなくも有りません。

特にこの後始まる「第二次世界大戦を含め、危険地帯となった欧州からの資本の流出」と「世界的な軍需産業の拡大による戦地から遠い安定した資源地帯としての投資流入」が重なり、同時に米国の地政学戦略と考えられる「ユーラシア大陸沿岸部の支配による太平洋と大西洋の内海化および南北アメリカ大陸の資本支配」の恩恵を受けたため、南米諸国は世界的な混乱の影響を必要以上に受ける事無く、大戦の時期を乗り越える事が出来たと考えられます。

この頃の南米は、アルゼンチンの様に世界的にも先進国と呼ばれる国家が出来る土壌が作られ、繁栄を享受した国も存在します。この頃までが南米諸国が繁栄した時代で、これ以降政策の影響もあるとはいえ、多くの国が坂を転げ落ちる如く没落する事になります。

(下記のリンクに「当ブログで考察している米国の世界大戦時の戦略」が記されています。読んで見てください)

関連リンク
・アメリカの地政学戦略シリーズ全三回
 米国1 約束された超大国アメリカ
 米国2 悪のアメリカ
 米国3 勝ったと思ったら負けていたアメリカ


★冷戦以後における没落
前述したように、第二次世界大戦終了頃までが南米諸国の絶頂期となり、これ以降は国ごとに違いが有れど、余りパっとしない状況に成ってしまいました。

その理由は先に上げた「イギリス絶頂期頃における大英帝国からの資本流入」と「第二次世界大戦の米国の対ユーラシア戦略から生じた資本流入」の循環構造にあります。

大戦が終わった事による世界の対立構造や貿易構造の変化から生まれる経済循環の激変から、富の逆流が起こり始め、それに対応できなかったため南米諸国が没落したと考えられます。

この対立構造の変化は、ご存知「東西冷戦」の事で、この米ソ対立の構造から生じる、米国の「経済に占める軍事的負担」と「ユーラシア沿岸の同盟諸国(西欧や日本)への援助」によって、貿易構造も米国が南米よりも西欧や日本への輸出入物資の拡大による貿易赤字増大に変化してしまい、米国のドルの価値が常に下落し続けるインフレ(価値下落)通貨になってしまいました。

そして南米諸国の不安定化や没落は、先に述べた「世界大戦前の英国からの資本流入」と「世界大戦時の米国からの資本流入」の二点によって成長していた南米各国が、

英国は、大英帝国の解体による経済不況からなるポンドの価値下落
米国は、貿易赤字からなるドルの価値下落

の二点から生じた英国と米国の通貨安定のための買い支えが、南米諸国に資本逃避として襲い掛かり、ソレが原因で各国で経済的な混乱が生じた為と考えられます。


下記に南米の代表国であるブラジルとアルゼンチンの債務不履行と英米の通貨回収の原因と成った政策を説明する。

まず大前提として

第二次世界大戦終了の

「1945年以後にボンドの価値下落を支える対外資産回収」が行われ、

「1980年ごろから米国の貿易赤字と軍事負担からなる財政赤字拡大によるドル下落が始まり、それを阻止する為に対外債権の回収」

があったと考えられます。



そしてまずはブラジルの政治経済状況が、

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ブラジルの債務不履行や不況(太字)

1930年代独裁ファシズム政権(ただし第二次世界大戦は連合国側)

1950年代~軍事政権による独裁的経済成長

1970年初頭オイルショック若干低迷

1980年代中南米全体で債務危機、米国の金利上昇によりキャピタルフライト

1983年・破綻

1999年・ブラジル通貨危機

2015年・マイナス成長
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この様になっており、見てわかる様に第二次世界大戦頃は、軍事ファシズム経済で統制さ連合軍側に参戦していたため経済的には安定しており、戦後も軍事政権による独裁的な工業化が進み経済成長しています。

しかし1970年代のオイルショックで低迷し始め、1980年ごろから米国の不調からなる資本逃避や消費低迷の煽りを受け、米国からの投資や米国への輸出で儲けていたブラジルを含む南米諸国が苦しい状態に追い込まれています。

冷戦以後は、当ブログでも述べている通り、日本主導の過剰発行したドルを世界に巻き散らかせ増大させたバブル崩壊の煽りを受け経済が不安定化しています。



そしてアルゼンチンの政治経済状況が、

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アルゼンチンの債務不履行や不況(太字)

1951年 世界大戦終了と冷戦開始による影響および、世界経済の貿易構造の変化からなるアルゼンチンの立ち位置の変化に対応したモノカルチャー経済の産業構造転換に失敗および放漫財政が理由で破綻

1956年・同上の理由で破綻

1980年代中南米全体で債務危機、米国の金利上昇によりキャピタルフライト

1982年・冷戦激化による米国の経済政策悪化の影響を受け経済低迷が生じ破綻

1989年・米国の経済悪化からなるドル回収の影響を受け破綻

2001・アジア通貨危機からITバブル崩壊まで続くグローバルバブルの連続崩壊の一部

2014・リーマンショック後のドル流入が引いた後の資本逃避され破綻
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アルゼンチンの破綻回数はブラジルより多く、まずイギリスの非公式帝国の一部であったため第二次世界大戦後の大英帝国の解体からなる英国のポンド防衛のあおりを受けた資本逃避、と映画エビータでも有名な戦時及び戦後のアルゼンチン政府の放漫財政による財政赤字のダブルパンチによって、アルゼンチンペソの価値が著しく毀損した事による財政破綻が1951年と1956年に生じたと考えられます。

また1980年以降は南米全体を襲った米国のドル防衛を目的とした通貨経済政策のあおりを受け、資本逃避が起き二度に渡り破綻の憂き目に在っています。

冷戦以降の破綻に関しては、上記のブラジルの説明の部分で述べた事と似た事になりますため省かせてもらいます。


★現状の中南米の混乱
結論として現状の中南米諸国の混乱は、


一に、時の覇権国家の投資を受けても、その覇権国家の経済状況が変化した時の富の循環に対し、南米諸国が適切な政策を打てなかった事

二に、資源や海外からの投資に頼った政策を行い、産業構造の転換に失敗しモノカルチャー経済から脱却できなかった事

三に、上記までには書かなかったが、南米の特にブラジルとアルゼンチン国境の河川地帯に統一国家を成立させたくない米国の介入が断続的にあった事(分断統治)

四に、中南米諸国の源流となったスペインとポルトガルの両国が工業国では無く、通商によって成立し工業能力を有していなかったため、独立した後継国である中南米の国家群もそれらの産業経験を持ちえず、高度工業化が出来なかった事


等が挙げられます。

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以上が中南米諸国が没落したいまだに苦しんでいる理由の一考察となります。

無論これ以外にも没落の原因に成っている事象も有るとは思います。今回述べさせてもらった事は、あくまでもブログ主の個人的な見解ですので、馬鹿正直に信用するのでは無く、閲覧者様ご自身でも調べてより真実に近い結論を探して見てください。

本日は以上となります。

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