2019年06月21日

前編・小国優位の極東地政学バランス(北朝・韓・台)

本日は、極東に存在し若しくは関わっている中小諸国と大国の地政学的な優位に関しての考察まとめとなります。

対象は"日本"を始めとして"韓国"、"北朝鮮"、"台湾"のミドルパワーと"米国"、"中国"、"ロシア"の大国で、主に大国間の間にある中小国が如何にして大国の間で自国の地理的位置を意識した生存戦略を行うかの考察となります。

なお文字量が多いため前後編に分割します。


★大国の自己保存と間にある中小国
大国と中小国の地政学的な戦略を考察するに当たり、大国と中小国とでは地域の安定を寄与する責任が全く違う事、そして自国の安全保障のマージンをどのあたりに置くかの認識が違うため、その認識の差異から紛争の原因に成り兼ねないと言う注意点を認識しておかなければ成りません。

まず大国は、出来る限り自国の外に防衛線を設置し、出来るだけ自国民に被害を出さない様な価値観を有しています。また平時において自国の保有する資産を確保し続ける対応も行います。これは大国であるがゆえに人口と消費力が強く、それを認識している国民の民心を考えた上での外交を行わなくてならないゆえのモノです。

対して中小国は、同じぐらいの敵国に対しては大国と同じで、防衛線を国外に置く事で安全保障を維持しようとしますが、相手が大国であればある程度の損害を容認して、その被害を最小にしようと行動します。これは資産の面でも同じで、同程度の国に対しては、簡単に資産を渡さない様にしますが、抗いがたい大国に対しては、切り売りするのを前提の対応をします。

この大国と中小国の関係は、基本的に大国の方が有利なのですが、唯一例外が生じる場合があり、それが大国と大国が安全保障をめぐってその勢力が激突する場合で、もしこの時に、間に存在している中小国が両大国にとって重要な存在であった場合、その様な環境下に無い時に大国から辛酸を舐めさせられていた中小国は、逆に大国に対して自国の価値を高く売る事によって利益を確保できる様になるのです。

逆に大国は、自国の安全保障を確保するために、中小国に敵国側に回られない様に餌を与えなければ成らなくなり、ある程度の損がを覚悟しなければ成りません。

そして極東での地政学を考えるに当たり、この大国間の勢力争いと言う問題を無視して語る事は出来ず、この人類史上稀に見る大国である「米国・中国・ロシア」の三つの大国が、その安全保障をめぐって激突する、世界のパワーバランスを決める重要地点である事を前提に置かなければ、その狭間に存在している中小国の地政学的な価値も語る事は出来ないのです。


★北朝鮮の価値
北朝鮮は、地下資源が多くあると言われているが、開発しなければ成らず、現状では軍事力と地理的位置を提供する以外では、自国の価値を売り込む事はできそうにない。

地理的位置を提供できる国は、米国、中国、ロシアの三大国全てに対してだが、中国とロシアの二国に対しては、より直接的に安全保障に影響を及ぼす事が出来る。

この地理的位置と、鉄砲玉の如き狂気を感じさせる公式発言とを駆使し、大国に対して影響力を及ぼすのが北朝鮮の安全保障政策となる。

潜在的に紛争リスクが高い国に対しては友好的な行動を行う。逆にリスクが無い国に対して敵対的な脅しを行うのは「リスクが高い国に対して激発を誘発する様な行動を取れないために、低リスクな国に対して行う恐喝行為を行うと言う形で、リスクが高い国に対しての遠回しのメッセージ発信を行っている」と見なす事が出来る。

・中国に対し提供できる事
一つ目が、対露に対しての戦略的優位の確立で、北朝鮮がロシアに付かず中国に付く事自体が、ロシアから北朝鮮の内満州包囲ラインの構築阻害の意味が生じ、同時に日本海への進出からなるロシア太平洋艦隊脅かしに貢献できる。

二つ目が、対海洋勢力との緩衝地帯である朝鮮半島が、その南部で大陸勢力が海洋に出てきてほしくないと考える米国および日本などの海洋勢力が進出した場合、北部の北朝鮮が緩衝地帯となり中国内満州が進行されない様に貢献できる。

・米国に対して提供できる事
米国が朝鮮半島南部を支配し中露両国が影響力を行使できない場合にのみ、中露両国の安全保障に対して北朝鮮の価値が上昇し、中露間のバランシングが出来る様になるため、米国の威を受けたバランシングを行い米国の利益になる様に動く事で米国に貢献し援助等を得れる様になるかもしれない。

・ロシアに対して提供できる事
ロシアの対中相手の安全保障に対しての戦略的優位を提供できる。北朝鮮の国土を提供する事により、ロシアとロシアの同盟国であるモンゴルと連動し、中国の内満州を包囲出来、同時に海路を使い北京直撃コースを提供する事が出来る。


★韓国の価値
韓国の地政学的重要性は、米中露が干渉しようとしている極東の諸国と比べると甚だ不利なモノと成っている。

地理的に陸上国境を有しているものの、あくまでの北朝鮮に対して出会って、大国に対しての陸上での侵攻ルートを提供できるわけでは無い。また北朝鮮に接しているため陸軍にリソースを投入しなければ成らず、海軍が驚異的な力を有していないため、海軍を使っての海洋ルートコントロールも限定的な影響しか及ぼせず、軍事的には大国に対して影響を与える事が出来そうにないからです。


・中国に対して提供できる事
韓国が中国に提供できる事は「ロシアと北朝鮮に対する戦略的優位」で、もしロシアと北朝鮮が同盟を結んだ場合、極東ロシアと北朝鮮のラインで満州包囲網が形成されてしまうため、満洲と韓国で挑戦を挟み撃ちにして包囲網が成立しない様にするための関係構築として韓国の価値を提示できる。

また韓国を通して日本海のロシア太平洋艦隊に影響を及ぼす事も出来る。(現状韓国が対日目的で海軍力を増やす軍拡を行ったが、本当は対ロシア太平洋艦隊目的の軍拡である可能性も有る)

ただし日米に対しては、海上自衛隊と在日米軍の軍備力の方が圧倒的であるため、韓国の海軍では牽制すらも出来そうにないと考えられる。

・米国に対して提供できる事
韓国が米国に対して提供できる事は「日本の動きを見据えたバランシング」で、もし日本と中国が同盟を結び米国と対立する態度を見せた時、韓国が米国と結びつく事により米軍の駐留するグアムと挟み撃ちにする事により、日本と中国の同盟に楔を打ち込む事が可能となります。

なお一昔前には「韓国が大陸勢力を海洋に出さない様にするための緩衝地帯である」と言う論調があったが、凍り付かない港と海軍さえあれば海洋進出は可能である現在では、緩衝地帯としての価値は昔に比べると少なくなっている事から、この論理では韓国の価値を米国に提示する事は出来ない。

むしろ韓国に米国が駐留する事で、米国側に入れず残った北朝鮮に中露何方かに対して自国を高付加価値で売り込む余地を与えており、米国の韓国駐留は北朝鮮のために成っていると見る事も出来る。

・ロシアに対して提供できる事
韓国がロシアに対して提供できる事は「中国と北朝鮮の連動に対する戦略的優位の提供」で、もし北朝鮮が中国と同盟を組んでロシアと繋がりを持たないのであれば、満州包囲が成立しない事になる。

そのような時に韓国がロシアと同盟を組む事が出来れば、極東ロシアから韓国に掛けてのラインで、ロシアの陸海軍と韓国の陸海軍を動員すれば、コストはかかるかも知れないが満州と北朝鮮を丸ごと包囲する事が出来る様になる。

★台湾の価値
領土面積で他国に劣る台湾は、どうしても国力(パワー)と言う点では周辺の大小国家群とは見劣りしてしまいます。唯一武器として利用できる事は、中国大陸に接するある程度の規模の島で、海上における優位に影響を与える事が出来る地政学的価値があると言う点です。

特に米中に与える影響は絶大で、中国大陸にへばり付くように引っ付いている金門島と台湾海峡の間を制御できるので、金門島の西隣にある「中華人民共和国」と台湾本島の東隣にある「米国(グアム)」は、現状の準冷戦体制下では自国の貿易優位を確保するために、どうしても台湾を気にした対応を取らなくては成りません。

・中国に対して提供できる事
台湾が中国に対して提供できる事は、「海洋における通商ルートの提供」と「外洋から来る海洋勢力に対する防壁としての国土と生産能力の提供」で、この二点を提供できるか否かによって、中国国内の海洋ルートの維持と海軍力に投入できるリソース負担の低減に繋がります。

・米国に対して提供できる事
米国に対して提供できる事は、中国に提供できる事と同じく「海洋ルートの安全保障協力」です。米国と同盟を結ぶ事によって、米国が極東で活動する負担を減らすと共に。中国が米国と対立した場合、金門島と台湾本土の海峡をコントロールする事により、中国の負担を増大させる事が可能となる。

・ロシアに対して提供できる事
台湾とロシアは地理的には成れており関係がなさそうな感じがするが、中国本土が「中露国境の満州地方」と「中台国境の東シナ海」を挟んで挟み撃ちに出来る地政学的関係にある事を無視しては成らない。この為準軍事同盟と言える立場を築く事ができ、もし台露のどちらかが中国と事を構えた場合、同盟関係が構築される可能性も有る。

ただし余りにもロシアと離れているため、連動して動けるかどうかには疑問が生じるし、領土も接していないため同盟を裏切った場合の対処も不可能なので、国運を掛けるほどの同盟になる事は無いと考えられる。(台湾が東シナ海の海域を脅かせば、化石燃料の安定輸入を不安視した中国が対露輸入を増やす。と言う形でロシアに利益が転がり込むようにするのが関の山と考えられる)

また米中との間でバランシング戦略を行い、両国を疲弊させる事で、相対的にロシアの強化に貢献すると言う形で、ロシアに利益を与える事も対露カードとして存在している。

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以上を持って「小国優位の極東地政学バランス」の前編を終了いたします。

続き後編は次回となります。



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