2021年02月
2021年02月14日
今回は国際社会で問題に成っている、ミャンマーの政治混乱に関しての考察となります。
ミャンマーと言えば、東南アジアに存在している国で、かつてはビルマとも呼ばれていました。
ASEAN11カ国にも加盟しており、東南アジアでは最も西に位置している国でも有ります。
近年に入り、軍事政権が統治していましたが民主政変が生じ、軍事政権下で幽閉されていたアウンサンスーチー女史が政治指導者(国家顧問兼外相)となる民主政権が誕生しました。
熱狂的に支持されていたアウンサンスーチー女史ですが、政権担当後は国内の民族問題等(ロヒンギャ難民問題)を制御しきれない国内の現状や、海外から見た場合少数民族を弾圧しているとしか見なせない政策や流布された情報のせいで、徐々に評判を落として、その影響力を低下させてしまいました。
さらに国際社会での米中の対立の激化から、緩衝地帯に存在しているミャンマーが中国の干渉を強く受けてしまい国内の混乱増大にも拍車が掛かっているようです。
その様な状況下のミャンマーにて、「昨年11月の選挙で、与党NLD(国民民主連盟)の選挙不正(キャンペーン)が行われていたのでは無いか!?」と言う疑いから、今年二月に入り軍が強制捜査に乗り出し、与党本部を始めとして政権中枢を軍事力で抑え込み、軍事政権を打ち立てると言う事件が発生してしまいました。
世界各国で、このミャンマーの政変を軍事クーデターと見なしているようですが、クーデターの専門家に言わせればクーデターとは言えないようです。(クーデターでは無く、軍人による政府だと述べている人も居ます。何が違うのかはブログ主には判別がつきません。「タイ王国に置ける軍による政府の徴発」の様なモノなのかな?)
何故、軍がこの様な行動に出たのかは分かりませんが、幾つかの考察が流布されています。
第一に、本当に選挙に置いて不正キャンペーンが行われたため、軍が介入し、選挙結果をリセットした説。
第二に、与党NLDが、軍の力を削ぎ落す為の政策を通そうとしたため、その反撃として政権の奪取が行われた説。
第三に、民族問題処理の不手際から、国際社会に置けるミャンマーの国際的地位が低下した事から、実質上のスーチー政権の政治外交センス欠如を認識し、軍政移行を断行した説。
色々な考察が思い浮かびますが、上記のような理由で、今回の実質上のクーデターが行われたのでは無いかと言われています。
★米国バイデン政権の対応
さて今回のミャンマーの軍事政変に対して、脊髄反射的に批判を行ったのが米国のバイデン政権です。
これに対して、安易なクーデター批判を行ったバイデン政権に批判を行う言論人も多くいます。
元々、ミャンマーの軍事政権は、NLDが政権を担当する以前に政権を担っていた時から中国と深い関係があったと言われているのに、この様な批判を行ってしまっては、ミャンマーを中国側に追いやってしまう可能性が増大してしまいます。
その点から見れば、バイデン政権のミャンマー軍事政権批判は、敵である中国側に力を与えかねない愚行であるとも見なす事が出来ます。
ですが、これを対ユーラシア、対中国及び周辺国に対するバランシング戦略と見なした場合、バイデン政権の行動は愚行では有りません。
それはミャンマーの地理的位置が問題に有るからです。
ミャンマー地理的位置は、「中国に隣接し、尚且つインドおよびインド洋にも面している」と言うものになっています。
中国とインドの双方に接している国は、他にもいくつかありますが、東南アジアに置いてはミャンマー一国だけです。(東南アジア以外ではパキスタンが同じ条件を満たしています)
もしミャンマーを中国側に追い込めば、中国はミャンマーを経由しインド洋に進出できますし、インドと仲の悪いパキスタンと関係が良い事や、スリランカを借金漬けにして港を押さえてしまっている事を考慮すれば、中国は対インド戦略で圧倒的に有利な状況を手に入れる事が出来る事になります。
つまり中国がインド相手に有利に戦争を出来る状況の確立させれば、中国に対インド戦を決断させる呼び水として利用でき、中印の激突リスクを上昇させ、トランプ政権で関係悪化し対中戦線に投入せざるを得なかった米国の軍事リソース負担をインド側に押し付ける事も可能となるのです。
この様に考えれば、脊髄反射的なバイデン政権の「ミャンマー軍による政変批判」も決しておかしな批判では無いと言う事が分かります。
★不安要素
上記の考察において唯一不安要素として挙げられる事が有るとすれば、インド海のシーレーン不安定化が考えられます。
もしインドと中国の抗争が勃発し、インド洋圏が不安定化すれば、それは同時に原油ルートの不安定化をも意味し、油の値段に反映される事にも繋がります。
もしそれが日本を始めとする原油購入国が負担だと感じれば、中東からの原油輸入を見直す可能性も十分考えられます。(この場合は殆ど日本だけで、逆方向のシーレーンから原油を購入するであろう欧州などは、それほどの影響は受けないかも知れません)
日本が調達先を米国やロシア辺りに変更すれば、米国の原油ドル決済にも影響が出て、米中露三大国間のパワーバランスも変化するかもしれません。
★ミャンマーの政府と軍は、本当に対立しているのか?
ここで考慮しておかなければ成らない事が一つあります。
それは「ミャンマー国内で対立しているように見えるNLDと軍ですが、本当に対立しているのでしょうか?」と言う事です。
英米や日本の様な海洋国家では、対立している与野党が裏では結託して、フリをしながら対立軸自体を政策変更の口実や他国に対する影響の行使として利用している節が有ります。
いかに海洋国家ほど余裕の無い大陸国家とは言え、同じようなプロレス政治していないとは断言はできません。
ミャンマー軍は批判されるような非民主的な手法で政権を奪取したのですから、もしかしたら最終的に批判に屈する形で、予定調和で再び政権をNLDに明け渡し外交方針を変化させるかもしれません。
つまり、中国が力を伸ばしている現状で、米国の作った海洋秩序だけに国運を賭けるのはリスクがある。
とは言え、国民に選挙で選ばれたNLDが中国に走るのは、国民の大多数の意で米国より中国に肩入れすると見なされかねない。
よって軍が批判覚悟で強制的に政権を奪取し、親中の政権を発足させ、もろもろの政策を行う。逆に「米国が有利で米国に肩入れした方が良い」と言う状況に成ったなのであれば、選挙に伴わない方法で無理やり政権奪取を行った軍を排除し、再びNLD等の民主的に選ばれた政党が政権を担い親米政策を行う。
と言う大義名分で米中間における外交方針を変化させれる国内的な状況を確立する為に、混乱覚悟で今回の軍による政変を行ったのでは無いでしょうか?
もしミャンマー軍が真にミャンマーの事を考えるのであれば、汚名を被ってでもその様にふるまうのでは無いでしょうか?
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以上を持って「ミャンマーのクーデターを地政学で見る」の考察を終了させて頂きます。
なお当ブログで述べている事は、あくまでもブログ主個人の見解に過ぎません。間違い等が有る事を前提の上で閲覧してください。
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