2020年06月29日

ミサイル防衛劇場の真意

今回は、防衛省及び陸上自衛隊で配備される予定だった、陸上型イージスステムである「イージスアショアの配備計画の停止」に関しての考察となります。

このイージスアショアの配備計画の停止は、ミサイル防衛システムを運用するに当たり、軽撃ミサイルを発射した時に切り離された分離ロケットが「もしかしたら市街に墜ちるかもしれず、民間人への被害が予想される」と言うリスクから発生したもののようです。

これは地上波テレビで盛んに語られていますが、これに対してネット言論界(主に保守系と思われている言論人界隈)では、「確かに切り離した分離ロケットが、市街に墜ちる可能性は否定できないが、そもそもイージスアショアシステムは、核ミサイル迎撃を目的としたモノで、中止の原因になっている≪分離したロケットが市街に墜ちるリスク≫に関しても≪核ミサイル直撃による被害≫を天秤にかけた上でバランスを考慮したものでなければ意味が居ない」と述べている人達が多くいます。

これに関して当然で、既存のミサイル防衛システムは、あくまでも普通のミサイルを迎撃する為のモノで、核ミサイルの迎撃を目的としたものでは無い事から、新たに精度の高い高高度を飛翔する核ミサイル迎撃の為のシステムを導入するのは当然の判断であると考えられます。

これらに反発する意見として、「そもそもミサイル飽和攻撃を受けたら迎撃ミサイルでも迎撃しきれないので意味がない!」とか「イージスアショア自体が何年も前の技術で、発注から整備や運用が行われるまでに送れた技術に成り下がるので意味が無くなる!」と言う意見でイージスアショアシステムの配備に批判的なモノも有ります。

これに対しても「飽和攻撃された時の事も考慮しているから、海上イージスシステムと陸上イージスシステムの二つのシステムを運用する事により、より多くのミサイルを迎撃出来る様にする必要が有る」と述べる言論人も居ます。(既存の盾で受け止めれない程の攻撃を受けた時こそより分厚い盾が必要であると言う意見は説得力が有ります)

双方の意見は、共に一考する価値が有りますが、ブログ主的には地政学な国家間のパワーバランス視点から見た場合、ある程度は納得できるのでは無いかと考えています。

これは当ブログで述べている、「日本が周辺の三大国(米中露)に対して侵略経路を提供する事による大国間の軍拡競争を促し疲弊させる」と言う考えを基準にした考察です。



★軍事バランスの制御
上記の侵略経路の提供を前提にした「大国のパワーバランスを維持したままの軍拡煽り経済疲弊に導く戦略」を前提にした場合、海上イージスと陸上イージスを同時配備し、米国だけに安全保障を依存してしまう状況は、完全に米国の影響下に置かれてしまう事を意味してしまうため、パワーバランス制御の観点から見た場合、あまり上手なやり方とは言えないかもしれません。

今回のイージスアショアの配備停止の判断は、これらの事を考慮の上で行った可能性は十分あると考えています。

そもそもイージスアショアの配備が表に出たのは、2017年のトランプ大統領誕生が叶ってからです。トランプ大統領が誕生するまでは親中国の態度を取っていたオバマ大統領が米国の外交の舵取りを行っていました。

無論、米国の政治家の腹の内は分かりませんが、ドナルド・トランプ氏が大統領になった後、米国は反中国の態度を鮮明して対中路線に外交の舵を切りました。

日本のイージスアショア導入の計画は、トランプ大統領が大統領になったその半年後の事ですので、イージスアショア導入自体が「米国と中国を対立させるために、米中の両国に日本の防衛をどちらが担うかを考えさせる事によるパワーバランスコントロール」と考察する事も出来ます。

そして今回の配備中止は「これらのバランス制御が叶ったため配備を中止した」とも考える事が出来るのです。

実際日本の安全保障を考慮した場合「どこか一国に安全保障を委ね、同盟をとっかえひっかえする事が出来ない事態」は、地政学的に導き出せる大国の軍拡誘発が出来なくなる事を意味し、国益から反してしまいます。

基軸は米国との同盟を大前提に、米国が日本に厳しい態度を取った時に、日本側も中国やロシアの軍事力を背景に態度を変えれる状況を作って置かなければ、米国依存が酷くなりすぎて外交の自由度が低下してしまいます。

その様な視点で見れば、今回のイージスアショア配備停止の判断は、納得できると思います。


★近隣諸国に脅されたらどうなるの?
さてイージスアショア配備停止に関しては、上記のような視点で見ればある程度は許容する事は出来ますが、現状に極東情勢を見た場合、日本の防衛力の相対的弱体化は、日本周辺諸国のこれまでの外交を見る限り不安を感じる材料として働いてしまいます。

つまり中国なり北朝鮮なりが「ミサイル打ち込まれたくなければ、金を寄越せ!」などと言う脅しを行った時、日本政府は唯々諾々としてこれに応じなければ国民の命を守れない状況に陥る可能性も上昇したと言う事です。

ですが、この日本国にとって甚だ不利益な可能性が上昇したからと言って、長期的に見た場合は日本の利益に成る可能性も有るのです。

理由は、やはり大国間のバランスと侵略経路の制御による軍拡を煽る戦略が考えの根底に有ります。

そもそも軍事力によって相手国を脅すと言う行為は、確かに短期的には簡単に利益を得る確実な方法であると言えますが、これが長期的に、また国際社会の礼節を選定に置いた時、その様な「軍事力による脅しを行う国である」と言う評価を確定させる要因として働いてしまいます。

ましてや相手国が国際的な指標で、決定的に軍事的に敵対していない状況でこれらの行為を行った場合、国際社会は脅しをかけて国に対して非人道的な国家であるとの評価を下す事になるでしょう。

その評価は、脅しを仕掛けた国が、今後国際社会で外交を行い難くなる事も容易に想定できてしまいます。

そして、それら容易な想定さえ無視して脅しをかける様な外交を仕掛けた場合、脅しを仕掛けた国がかなり切迫した状況に追い込まれている事も予測できるのです。

ただでさえ大国間のパワーバランスと侵略経路のコントロールを生存前略の主軸としている日本としては、どこか一国でもバランスを崩す様な事をした場合、全体の流れが混乱する恐れもあり、国益からも反してしまいます。

だからと言って安易に助ける真似をした場合、テロ国家を支援する国であると言う評価を日本が受けてしまう事に成り兼ねません。

ですが、その様な状況でテロ国家の方がミサイルを突き付けて金銭や技術を要求する様な事を行ってくれれば、そのテロ国家を生かしたまま国家間のバランス制御に生かす事も出来ます。

日本側としても「軍事力で脅されたのだから仕方が無い、そんなに日本を批判するのであれば、何故国際社会は日本を助けてくれなかったのか? 日本には米国を始めとする連合国(国際社会)から押し付けられた憲法九条という足枷を掛けられ状況で国を守ると言う不利な環境が作られてしまっているのだぞ」と言う名分で、テロ国家支援を正当化する事も出来ます。

その様な環境を作ってしまった米国に対しても「その様な名分で中国側になびかれたら困るだろう?」と言うメッセージ発信からなる脅しも行いやすい。

その様なテロ国家支援による国家間バランスコントロールと言う観点からも、今回のイージスアショアの配備計画中止は、必ずしも悪い判断では無かったと思われます。

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以上が、当ブログにおけるイージスアショア配備停止に関する考察となります。

イージスアショアの「配備続行の正当性」も「配備停止の正当性」も共に言っている事は正しいと思うのですが、地政学的なパワーバランスと言う視点を見た場合、矛盾する双方がともに並列している現状こそが、日本にとって外交の幅を広げる道具として活用できるのでは無いかと言う考察をさせて頂きました。

本日の考察はこれにて終了させて頂きますが、当ブログでの考察は、あくまでもブログ主個人の見解に過ぎませんので、間違い等が有るかも知れません。それらのリスクを前提の上で閲覧してください。

本日はココまで!!

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