2020年12月15日

アメリカの次の敵。の次の敵


前回で米国の次の敵として"海洋アジア勢力"が台頭する可能性を提示させていただきました。
今回は、その続きで、更にその次に米国の敵として台頭しそうな勢力を考察させて頂こうと思います。

結論から先に申し上げますと、海洋アジアの次に米国にて期待しそうな勢力は、アフリカ、オセアニア(と言うかオーストラリア)、そして南米(と言うかラテンアメリカ)の「南半球勢力」に成ると考えています。

この南半球勢力が、米国の世界覇権に挑戦者に成ると言う考えは、前回の海洋アジアが米国に対する挑戦勢力に成るのと同じく、予測される資本の流れにその原因があると考えています。


★海洋アジアは米国に勝てるのか?
まず南半球勢力が台頭し米覇権に挑戦する前に、そもそも前回述べた海洋アジア勢力は米覇権に勝てる可能性は有るのでしょうか?

ブログ主の見解としては、「いい勝負は出来るかもしれないが勝つことはできない」との考察を述べさせていただきます。

この理由は、海洋アジア勢力だけの問題だけでは無く、その周囲に存在している国や地域の地政学的なリスクが根本に有ります。

そもそも「海洋アジア勢力が台頭」するとの考察は、現在の米中対立に置いて、米中の両勢力が「味方を増やすため」と「将来的な成長地域であるため」の双方の面から海洋アジア投資を増やしてしまうため、海洋アジアの台頭が促されるとの考察を述べたのですが、逆を言えば、米国から見ればユーラシア対立の海路の大動脈である地域に影響を及ぼす勢力として成立する可能性も有りますし、中国から見れば自国に隣接する海洋のムスリム勢力の台頭を予感させる者でも有り、米中の両国共に潜在的な敵となる要素が有ります。

そして米中両国にとっては、「海洋アジアが潜在的な敵国となる可能性に対しての負担」は、国境を接し、陸軍力を送り込まれる可能性のある中国の方が負担が大きくなる事になります。

しかし、これは海洋アジア勢力から見ても同じ事になるのです。


正直、海洋アジア勢力がどれだけの規模と領域で統合され、単一もしくは連合勢力として成立するのかは分かりません。

インド周辺のみ、もしくはASEAN地域のみ、で統合されるのかもしれませんし、もしかしたらインドやASEANや更には中東に至るまでの、真に東南アジアから中東に掛けての海洋に面する勢力の一大統合によって成立するのかもしれません。

ただ現在の米中対立からASEANやインドが対中安全保障目的で団結する可能性は十分ありますし、その様な大勢力が成立すれば、その経済活動からなるエネルギー消費は相当なモノとなるため、中東のエネルギー産出国もそこに入るかも知れません。

ですが強大な勢力として成立すればするほど、多くの勢力と国境を接し安全保障の為に割り振る国家リソースも大きくなってしまいます。


★海洋アジアは周辺に引きずり込まれる
さて海洋アジアが一勢力として台頭した場合、その勢力内部と外部にどの様な紛争リスクを抱える事になるのでしょうか?

現在海洋アジア地域に存在している国は、東南アジア、南アジア、中東が存在しています。

一応、東南アジアは現時点でも経済連携協定などを結び、紛争リスクより経済発展を優先させる政策を実施し、その結果としてある程度の安定を享受してはいるので、それほど紛争リスクを考慮する必要は無いかも知れません。

南アジアは、インドが大勢力すぎるかもしれませんが、一応南アジア圏では対立するにせよある程度の出来レースで政治外交が動かされていると言われています。

中東では、イスラエルの存在やイラン・サウジ対立がネックであるとも言えますが、さすがに長年の混乱の中にも"ある程度の秩序"が築かれつつあるようで、同時にエネルギー輸出の統合さえ何とかなれば、ある程度の安定を享受する事も可能かと思われます。


ですが領域外に対してはどうなるでしょうか?

例えば、現在中央アジアでは騒乱の種は尽きません。現在まで米国が軍事介入していましたが、トランプ政権に成って完全にアフガンなどから手を引く事を宣言しており、且つては1万人を超えた在アフガン駐留米軍も来春までには2000人規模にまで減らされると言われています。(現時点でも五千人を割っていると言われています)

同じ中央アジアではロシアや中国が大きな影響を及ぼしていますが、現在の米中対立が進めば中国も中央アジアに介入するリソースを捻出できなくなるかもしれませんし、ロシアも対中戦線に引きずり込まれれば中央アジアにかまっている暇は無くなるかもしれません。

そうなれば中央アジアは大国の影響から離れ、混乱状況に陥るかも知れません。

もしその様な事態に陥れば、成立する可能性のある海洋アジア勢力にとっては、自勢力の安全保障を脅かす混乱地域の可能性ありと考え、軍事介入を行う可能性も十分出てきます。当然そうなれば、大国同士の威嚇戦では無く、まとまった勢力が無い幾多の小勢力を相手にした泥沼の地上戦・ゲリラ戦に引きずり込まれる可能性も有ります。(現在の米国やかつてのソ連を同じですね)

更に前回の米中対立でも述べさせていただきましたが、大国同士が対立する時は、味方に成るであろう勢力を増やすために自領内を締め上げて捻出した資本を他の勢力の応援に回さなければ成らないため、海洋アジア勢力もその負担に耐えかねてギブアップする可能性も有るのです。

これは中国が負けるであろう理由と同じですね。海洋アジア地域も中国ほどでは有りませんが、北に長大な陸上の国境を有しています。

以上の理由から"海洋アジア地域"が巨大な勢力として台頭したとしても、中国ほどでは有りませんが、米国以上に「陸と海の軍事安全保障リスク」に晒される恐れから、防衛負担が掛かってしまい、米国の後塵を拝する様になるのでは無いかと予測できるのです。


★米国とロシアは、和解する(ロシアは米国に依存する)
さてここで少しロシアの事を述べさせていただきますが、今後米中の対立が深まれば深まる程、また上記で述べた海洋アジアの台頭が生じれば生じる程、ロシアは米国にとって必要な国に成るかも知れません。

理由はロシアが、現在米国と対立している「中国」や、今後台頭し米国と対立する可能性のある「海洋アジア」に敵対する勢力としての側面があるからです。

まずロシアと中国は歴史的にも領土問題を巡って争ってきた経緯が有りますし、現時点でも「中国東北部」と「極東ロシア」が国境を接しており、潜在的な敵国として認識し合っている筈です。

ただ現時点での海洋アジアに存在している国々は、基本的にはロシアと対立してはいません。寧ろ国境も遠く、インドやASEANなどから見たら敵国である中国の更に向こう側にある同盟国候補でも有ります。

その様なロシアが海洋アジア地域と敵対する可能性が有ると言うのはどういうことかと言うと、海洋アジア地域が一定の規模で統合され巨大な勢力として台頭した場合、支配領域がアフガン等の内陸の中央アジアにまで及ぶ可能性も有るからです。

もしその様な事態になれば、中央アジアに影響力を有するロシアが自国の属国下にある国が他国になびく事を意味し、安全保障リスクにさらされる事になってしまうのです。

そうなれば、当然海洋アジア地域とロシアは勢力圏を巡って激突する事にもなります。

故に、ユーラシア外部の米国の視点を有した場合、現時点での米中対立だけでは無く、米中対立の影響を受け台頭する可能性を有する海洋アジア地域が「何らかの域内的混乱を打破するため海洋に出る可能性」の双方を考慮すれば、対ユーラシアバランシング政策の戦略的にも、ロシアとの関係改善を成し遂げておく必要が出てくると推察できるのです。


★ユーラシアに属さない安全地域である遠方の南半球は繁栄するが、その後・・・
さて、第二次世界大戦以降の世界で、米国はソ連(現ロシア)と冷戦を繰り広げ、ソ連相手に有利に立ち回れる状況を築き上げるため中国と手を結び、その結果中国が台頭し、現在の米中対立が生じる事になりました。

そして現在の米国は、米中対立を有利に進めるために海洋アジア地域を巨大化させ、その勢力と手を結ぶ事により中国との対決を優位に進めようとしています。

そして当ブログではその結果海洋アジアが発展し、結局のところ米国と海洋アジアとが対立してしまう状況が作られてしまうのでは無いかと考えています。

ではその結果、その時に世界の富の流れはどの様に変化するのでしょうか?


前項までで述べた事は、実質上米国の対ユーラシア諸国に対するバランシング政策が次々と米国と対立する勢力をユーラシアに生み出してしまう事を示唆しました。

当ブログでは、その結果としてユーラシア大陸は大勢力の対立の場と化し、その不安定を嫌い資本がユーラシア外に流れて行くのでは無いかと推察しています。

そして、その資本の流れ行く先は、ユーラシアに成立するであろう大国と対立し、世界システムの保護や安全保障リスク対応に追われるであろう財政赤字拡張路線の米国では無く、それ以外のアフリカ南部、オセアニア、南米のこれらの地域に成るのでは無いかと思われます。


無論これらの地域に富が流れたとしても、あくまでのユーラシア内部の勢力が米国と対立している状況が成立している場合であって、ユーラシア大陸内の混乱がある程度収まれば、富の逆流が生じる事による資本撤収が生じ、今上げた地域が混乱状況に陥り、軍事紛争のリスクが生じるのでは無いでしょうか?

そうなれば再び米国が世界を安定化させるために、これらの地域の治安時回復のため出張らざるを得ないと思われます。(全世界でドルが使用されている限り、ドルを使用してくれる地域が減る事は、ドルの価値の下落に繋がりますので、この結論は当然の帰結であると思われます)


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結局米国は、世界の支配者に成りあがった国では無く、世界の維持管理者としての立場を押し付けられた国なのでは無いでしょうか?

何処の国がその様に追いやっているかは、閲覧者様方のご想像にお任せいたします。

以上を持って、「アメリカの次の敵。の次の敵」の考察を終了させて頂きます。


なお当ブログで述べている事は、あくまでもブログ主個人の見解に過ぎません。間違い等が有る事を前提の上で閲覧してください。

本日はココまで!!

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