2017年12月20日

対外資産は武器である

今回のお題は対外資産に関するモノです。

対外資産と言う話を持ち出すと、現在日本が世界最大の純資産国であると言う事が有名である事を思い出す人もいると思います。

日本国民の中には、日本が外国に蓄えた対外資産を誇る人もいますし、逆に「対外資産など没収されたら終わりだ、日本には軍事力が無いため、それらの資産を守る事も出来ない」と言う人もいます。

これは両方とも正しい認識であるとも言えますし、両方とも見当ハズレの認識であるとも言えます。

本日は、それらの考察を行おうと思います。


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まずは資産国のお金の貸方と投資した国における資産形成の仕方を分類してみました。

★資産国の対外資産の作り方

A-1.お金の貸方(自国通貨を貸した場合)

お金の貸方である投資側の国が、自国通貨建てで貸し付ける場合、例えば円ならば通貨円が他国で使用される事になり円の価値の安定化に繋がるが、貸し付けた円を回収できない場合は、日本国の損害と成ってしまい、通貨価値の下落圧力となってしまう。


A-2.お金の貸方(現地通貨で貸した場合)

現地通貨の価値を「円」で保証してあげる体制を作り上げると言う事であり、日本が現地通貨を貿易で率先して使用する事を意味している。借り手側が日本の資産の没収や返済拒否を行った場合、日本国は借り手側の国の現地通貨を貿易等で使用する事をやめてしまう可能性(貿易や投資が成り立たない為)があり、現地通貨の価値下落となり、インフレ圧力によって現地の国の人々の生活が苦しくなる。ただし借り手側の生産体制が安定している場合は、インフレ圧力が緩和されるため現地の人達の生活への影響は限定的である。

日本としては円を売って現地通貨を購入して使用する為、円安の圧力を受ける可能性もあり、日本国民は物価高の苦しみを背負う事になるが、投資や貿易のバランスが安定している場合は、インフレ圧力が緩和される事と成る。


A-3.お金の貸方(基軸通貨で貸した場合)

日本が他国にお金を貸す時に、基軸通貨である「米ドル」を購入し、投資国に対して米ドルを貸し付けて投資する事によって現地に資産形成をする事になる。そのため「円安ドル高」となり、米国も投資や消費を行いやすい資金の捻出が行える様になる。逆に日本国はインフレ圧力に晒される事になるため日本国民の生活は苦しいものとなる。

日本国は、国際収支黒字でドルを稼ぎ、ドルで円を買い戻す事によって「円」価値を安定させなければ、通貨安になり生活が苦しくなる。投資した国の外貨を稼いで「円」に還流させる時も、一度、米ドルに換えてから「円」に戻すため、短期的に米ドル高になり、円の価値が上がるまでに時間差が掛かるため、日本国民が海外で得た富で豊かになるには時間が掛かる事になる。

なお赤字国である米国は、常に日本を始めとする経常収支黒字国に自国の通貨価値を支えてもらっている状況となる。但し、米ドルの価値を安定させてくれている国を安定させなければ、それらの国々の生産体制が損害を受けて、ドルを稼ぐ能力が衰えるため、結果的に経常収支赤字国である米国のドルの価値が下落して、合衆国国民の生活が苦しくなる事となる、そのため米国は自国のドルの価値を支えてくれる国々と世界経済の安定維持に負担を被らなければ成らなくなる。


B-1.資産の作り方(あげるだけ)

他国にお金や工場を差し上げて、全てを投資された国だけで行え居る様になると、裏切られたときに投資を行った国が被害にあうようになる。


B-2.資産の作り方(ひも付き)

投資国が現地に投資などを行う時に、例えば工場を運営する時に投資国からの産業機械や部品を購入しなければ運営できない様にする行為。いざ資産の没収をされても投資国からの部品輸出の制限を掛ける事によって、実質的な経済制裁を行ることが出来るため、投資受け入れ国も安易に約束を破る等の行為を行わない様になる。


C-1.赤字国か?

投資を受けた国が、それでも尚経常収支赤字が赤字である場合、自国の通貨価値を安定させるために他国からの追加投資を仰いで、自国の経済を安定させなければ成らない。


C-2.黒字国か?

投資を受けた国が、経常収支黒字国になる事が出来れば、高い競争力が身に付いた事になり、自国で捻出した通貨で借金を返済したり技術投資を行ったり出来る様になる。

他国に自国を安定させてもらう必要が無くなるため、他国から受けた資産の没収等を行うリスクが上昇するが、そもそも約束を守らない国は国際貿易等で安定的な経済情勢を築けないので、それらのリスクを考慮する必要までは無いかも知れない。


D-1.利益・資産の回収がされない場合

投資国が、投資された国から資産を回収しない場合、投資された国が経常黒字ならば良いが持続的な経常赤字であった場合、自国で生産できる以上の消費を行っている可能性が大であり、資本逃避が起こった場合、通貨価値の下落が起こり国民生活が苦しくなる。


D-2.利益・資産の回収がされた場合

投資された国が安定的な経常黒字を挙げて、自国の供給能力を高めていた場合、資本逃避が起きたとしても、自国の通貨価値や物価の価値を安定させることは可能である。



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上記の事から、必ずしも海外に形成した資産が現地政府に接収されたからと言って、日本国の国益に反する状況に成るわけでは無い。

逆に意図的に接収させる事によって、現地政府に対して経済制裁を行い世界全体の国家間のパワーバランスを制御すると言う戦略を取りえる手段を有している、と言う事を前提に日本の対外投資を見て行かなければ成らない。



★キャピタルフライト(資本逃避)は武器である。

上記でも、また以前にもこのブログで取り上げた通り、他国からの投資を受けれて、無理矢理豊かにさせられた国は、自国だけでは養え切れない程の人口と消費力を与えられてしまうため、非常に限定された外交しか取れない状況に追いやられる。

これ等の増えすぎた余剰人口と消費力を与える様な政策を他国に対して行う事こそが、日本国の外交戦略として機能する事を覚えておかなければ成らない。


日本の消費税制度は、他国に比べると特殊な税制度とも成っている。これは「付加価値の低い産業のひも付き海外移転」及び、「財政出動と増税のスタグフレーションによって捻出されたマネーを、基軸通貨国を通じて途上国に送り込む産業構造支配とバブル経済増強」戦略の基幹と成っている。

この様な戦略を取っていると目される日本ならば、近隣諸国に火と油の下を与えて、正義感を満足させながら日本叩きを行わせる戦略や、自国の国土を侵略経路として提供して隣接する国々の安全保障を脅かす行為が、世界的に更なるバブル増強と隣接する国の実質的な国力下落の国家戦略として成立するのである。

そして世界中の国々が、自国で維持できる以上の経済や消費力を与えた、日本初の「基軸通貨の米ドルバブルの崩壊」を恐れて、日本に対し資本逃避を行わない様な外交戦略を取らざるを得ない立場へと追い詰めて行くのである。


★米国に投資負担と世界秩序維持を押し付ける

これ等の対外投資を、世界最大の経常収支赤字国となった覇権国家アメリカの米ドル(基軸通貨)での運用で行うと、無理矢理通貨高にさせられた合衆国は、現在の自国の通貨価値とそれに伴う世界における生産消費体制を維持する為に、世界秩序を守らざるを得ない状況に追いやられてしまう。

そのため常に過剰なまでの通貨発行を強いられた米ドルは、価値下落の圧力に晒されてしまう。本来は基軸通貨の価値が下落すれば使用頻度が少なくなり、耐えがたいインフレ圧力の為に覇権国家として運営していけなくなり覇権の移譲が行われるはずなのだが、経常黒字国が無理やり米ドルを購入して運用する事によって通貨価値の持続的な使用がされてしまい、撒き散らかせた米ドルによる世界的なバブル経済化が進んでしまう事と成る。

そして米国は、その世界的なバブル経済の体制下で利益を上げる事の出来る国に対して、米国債を購入してもらわねばならず、同時にそれらの国々の利益に成る行動を取らなくては成らなくなる。そうしなければ自国の通貨や債券が売却されてしまい耐えがたいインフレ圧力が合衆国国民を襲う事になるためである。


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結論を言えば、日本国民は国家の対外資産の認識を変えなければ成らないと思う。

即ち「通貨の価値」とその価値を支える「担保としての実質的な供給能力」に関してである。それらが理解できれば対外資産の戦略的活用と言う観点から日本の外交を見ることが出来るはずである。

対外資産を返済する前提で借りられると、不必要な支出や無理な人口増や消費がされないため、キャピタルフライトを武器として使えないので、出来ればだまし取ったり返済拒否をしてほしい、という考えがある事を知るべし。



日常生活に置き換えて説明するのであれば、「生活力の無いムカつく屑に無理やりお金を貸し付けて、多くの子供達を作らせてからハシゴ外しを行い没落させてやれば、家庭を維持する事の出来ないムカつく屑は一族諸共破滅する」と言うだけの事を言っているのである。


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相も変らぬ血も涙も無い事を書いてしまいました。

今回書いた記事は、日本がその様な事を行っているというわけでは無く、「そういう可能性もゼロでは有りませんよ」と言う警句を込めて言っているだけの事であると言うのを前提に読んで欲しいと言っているだけです。(なら最後に書くな)

本当はこれ以上に書かなければ正確な事を伝えきれない事は分かっているのですが、ブログ主の忍耐や努力が続かないので、今回はこれにて終了させてもらいます。興味が有ったらご自分で色々調べると、もっと理解が深まると思います。


以上を持って対外資産は武器であるを終わりにします。


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