2018年03月23日

歴史で考察する地政学戦略ドイツ2

歴史で地政学を考察するシリーズINドイツの二回目です。前回は、ドイツ民族の国やドイツの地政学に関して記事にしています。ぜひ読んでください。


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★第二次世界大戦
第一次大戦後の欧州でドイツは、莫大な借金を背負い国家が崩壊し、ハイパーインフレーションや世界的な恐慌(デフレーション)に巻き込まれ散々な目に遭い、ナチスドイツの台頭を許す派に目なりました。ではこのナチスドイツは、どの様な地政学戦略を行っていたのでしょうか。

ナチスドイツと言えば経済政策やユダヤ人浄化政策や欧州やアフリカでの戦争の事ばかりが取り上げられて、それ以外の事はあまり取り上げられません。ですがそこはドイツ!、しっかりとした地政学的なコントロール戦略を行っています。

まずドイツの状況ですが、ハイパーインフレやデフレーションを経験し国民はかなり悲惨な状況に追いやられ、それを打開する為にナチスは外国資本に対して借金をして公共事業を大々的に行い国力を回復させました。

そこまでは良かったのですが外資に対して借金を返済しなければ、資本を撤収されて破綻してしまう可能性のある状況に追いやられていた事までは知られていません。そのため借金を返済する為に、自国の産業の為に、常に発展し国力を増大しなければ成らない状況に陥りました。

そして、そのために常に資源やエネルギーを確保し、人口を増大させ、そのための土地の確保もしなければ成らない状況に陥っていたのです。

如何すれば良いのか?

結論から言えばブロック化経済に成っている世界で、資源やエネルギーや土地の確保を行うには、「侵略」しか有りません。そしてドイツが侵略するとしたら、隣接するフランス、ロシア(ソ連)に対してです。

ではフランスとソ連(ロシア)との間で先端を開くとしたらどの様な戦略が必要になるのでしょう。

フランスに対しては、フランス自体が借金漬けで、世界大戦後の国力回復と世界恐慌の後遺症から立ち直っておらず、経済の回復著しいドイツに比べると強敵と言える存在では無くなっていました。

問題はソビエトです。共産圏で統制経済であったソビエトは、世界恐慌の影響を自由経済の国ほど受けていませんでしたので、ある程度の国力回復を成功させており、ドイツから見ても油断して良い存在では有りませんでした。ではドイツはこのソ連をどの様に攻略すればよいのでしょうか?ドイツの軍事力は制限されソ連には及ばない。ソ連がドイツに向けている戦力を何とかしなければ、戦いにすらならない状況です。

どうするドイツ?!

簡単です。日露戦争が起こった時と同じように、自国に向けられたソ連の軍事リソースを極東に向けさせればいいのです。

★独ソ戦開戦に利用された中国と日本
ナチスドイツが対ソ連の侵攻を成功させるためには、ドイツとソ連の国境に貼り付けされている赤軍の軍事リソースを極東に向けさせ無くては成りません。そのためには日本とソ連の中を引き裂き、激突させる必要性が生じます。

日本とソ連の関係は決して良好であったわけでは有りませんが、シベリア出兵以降では1925年に日ソ基本条約を結び正常な国交を築くに至りました。その様な両国の関係を直接悪化させる事は難しい事でしたので、ドイツはもう一つの図体だけはデカい大国を利用する事にしたのです。

中国です。

中国は清国の消滅以降混乱が続いていましたが、満州や北部から沿岸部に掛けては日本を含む外国資本が進出し経済を活性化させていました。それを快く思わない勢力も中国国内に存在しています。即ち中国南京政府です。

中国の北京政府は、基本的に日本と防衛協力(現在で言う日米安保みたいな条約)を結び治安の維持と投資を行い、中国大陸の更なる情勢悪化阻止や復興を行っていました。ですがその様な事を行われると困るのが、自分達の中国での発言力が失われる南京政府(後の蒋介石政権)です。

南京政府は進駐勢力の排除と自勢力の拡大を目的とした武力攻撃を度々日本に仕掛けましたが、常任理事国となり五大国となった日本相手には優勢な戦いを行えませんでした。

自分達の力だけでは勝利できない中国の各勢力は外的相手に団結し、同時に海外からの支援も受けました。その中にナチスドイツが存在したのです。

第二次上海事変1


分かりますよね!?

日清戦争後の三国干渉でも、第二次モロッコ事件でもドイツという国は、自国に隣接する国の更に向こうで何か謀略を行います。この場合は中国で対日抗争を頑張っている南京政府に武器を送り参謀を派遣する事により、南京政府の軍を日本人民間人の住む租界などにけしかけさせて、ついに日本を戦争に引きずり込みました。

戦争に引きずり込まれた日本は中国大陸での軍事活動を行う為に、満州で軍事訓練も行いました。これに慌てたのがソビエト連邦で、ただでさえ内戦が終わりその時点でもフィンランド相手に冬戦争を行っている最中だったのです。アジア最強の日本が極東の満州で大規模な軍事演習を行いソ連相手に戦う可能性のある行動を取ったので、慌てて極東に軍事リソースを割かざるを得ませんでした。

第二次上海事変2


一応、ソ連とドイツの間で「独ソ不可侵条約」が結ばれ、日本とドイツの間でも「日独伊三国同盟」を結び、更にその後に日本とソ連の間でも「日ソ中立条約」が結ばれました。
この参加国の間では条約の上では戦争は起こらない事になっていましたが、ソ連は陸軍大国で歴史的に難癖をつけて条約破りを繰り返してきた国であるため、日本も同じように条約を破り戦争を仕掛けてくる可能性を考えて、極東に戦力を送ったようです。

そのような時でした。ナチスドイツが独ソ国境を突破してソビエト連邦内になだれ込んだのは・・・

第二次上海事変3


見事ドイツは、中国を日本にけしかける事により、日本の中国大陸での軍拡を招き、それがソ連侵略の準備では無いかと恐れたソ連に極東の防衛力強化を行わせ、ソ連がドイツ国境に割く防衛力の希薄化に成功したその瞬間に、間髪入れずに騙し討ちを行い奇襲に成功したのです。

この後泥沼の独ソ戦へ突入したのは多くの人達が知るところです。


★現在のドイツ
地政学的に見て、現在のドイツが周辺国と紛争状態に成るとは考えにくい状況に成っています。これは二度にわたる世界大戦の結果、欧州が没落した事によるEUの設立が原因です。

世界大戦後、経済や軍事でも二等国の集団に成り下がった欧州が、米ソの後背を見る事になったため、安全保障と経済活動での遅れを取り戻そうとヨーロッパ連合を設立しました。同時に二度にわたる大戦で暴れ回ったドイツの力を封じつつ強力な産業力を持つドイツの力を自分達のために利用し制御するためでもありました。

冷戦期に国力を回復し欧州一の経済を持つ大国へと復興したドイツは、欧州統合においてもEU域内諸国の経済を支える役目を押し付けられました。しかし結果を見ればEU諸国はドイツへの経済依存を高めてしまい、ドイツ無しでは欧州連合が維持できない状況を作り上げてしまった為です。ドイツはあえて負担を被り他のEU諸国の経済をドイツ無しでは維持できない様な国家に仕立て上げたのです。(計画的かどうかは別問題です)

その結果、ドイツは他国の市場を戦争することなく制してしまい、他国をドイツに逆らえない状況に追いやる事に成功したのです。

それこそが現時点で、「ドイツがヨーロッパ各国に戦争を仕掛け、紛争の原因になる様な国家では無くなったと言う事を保障する状態になった」事による平和の保障の実現と、ドイツが戦争しなくても良くなった理由でもあるのです。


★現在のドイツ・EUのバランシング
現在のドイツ・EUにとって最大の安全保障の脅威は、冷戦期と同じくロシア(ハートランド勢力)と成っています。ですが近年、ロシアの国力が冷戦終了直後に比べると明らかに回復し、EU諸国の脅威になる状況が到来しました。

ですがかつてのヨーロッパ諸国(ドイツ)に比べると、他国に紛争を興す事により自国の利益確定を行う事が少なくなりました。行っているのは東南アジアの社会情勢に対しての口先介入と投資戦略ぐらいで、欧州の近くの中東やロシア国境では逆に紛争の原因と成っているくらいです。自国(のこ場合EU)の周囲で紛争を興さず、遠く離れた所で紛争の種を撒くと言うのは、地政学戦略におけるコントロールの基本となり、いまEUの行っている事の一部(ウクライナや中東の問題)ではその基本に反していると考えられます。

しかしこれには理由が有ります。

帝国主義の時代、欧州子をが世界一の国力を持つ経済地域でした。ですので欧州で混乱を興す事は他の地域に欧州の資本を逃避させてしまう事に繋がりました。現在の欧州は、必ずしも世界一の経済体では無いので、自国以上の経済体に軍備負担などによるEU諸国以上の莫大な支出を行わせる事が、相対的に自国の国力を高める事に繋がるのです。

ではEU以上の勢力とはどこなのでしょう?

それは無論米国です。更に米国に対しての挑戦国として急激な台頭をしている中国です。そこでEUの国益は、その米中二国の対立となり、そこにロシアも加えることが出来るのであれば最善かと思っている筈なのです。

この様に考えれば、なぜクリミア半島の問題でロシアと対立しているのかが分かります。ロシアと対立すると言う事は、ロシアの陸軍リソースが欧州に向けられる事を意味し、欧露国境とは逆方向にある中露国境での中国に向かうロシアの軍事リソースの希薄化を誘発させることができ、中国の対露軍事行動の誘発を上昇させる事になるのです。

この様に考えれば、ドイツ主導になってはいますがEUが今だ地政学コントロール外交と政策を行っている事を予測できるのです。


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以上を持って歴史で考察するドイツの地政学(全二回)を終了します。
この記事で重要なのは、第二次世界大戦前のシナ事変において、何故日本が中国大陸に引きずり込まれていったのか?なぜドイツがその様な援助を中国国民党南京政府に行っていたのかの考察となります。

現在の学校では絶対に教えてくれないし、ネットでもココまでアホな考察する人は居ませんので、このページを見ている人の考察の助けになれば良いと思います。(でも実際会った事ですが間違った考察である可能性も有るので注意してね)

しかしこうして考えて見ると、第二次世界大戦でドイツとともに敗戦国になった日本が、この辺りの地政学コントロールの事を知らされずに、ドイツが日本に対してどの様な事を行っていたのかを分からず、親ドイツ的な感情を抱いてしまっている日本人が多くいるのが残念に思います。

とは言え現在これらの事を持ち出して、日独関係を必要以上に悪化させる必要は無い物と思われます。ですが現在のドイツ(EU)が何をしようとしているのかを考えなくても良いと言うのは全くの別問題かと思います。

本日はココまで!!


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