2018年06月12日
ローマ帝国とヨーロッパの違い
本日は、現在のヨーロッパと、その源流となった古代ローマ帝国の違いを考察した記事となります。
「ローマ帝国」そして「ヨーロッパ」と言えば現在のグローバル文明の元祖とも言える文明です。大航海時代以降、世界中に植民地を作り、全世界に文明の波及をもたらし、現在に続くグローバル社会の基礎を作ったのが、西欧から発生したヨーロッパ文明であり、そのヨーロッパ文明の基盤となった文明が、古代ローマ帝国である事は、多くの人々が歴史の授業で学んでいる事です。
欧州の人達は、自分達の文明期限はギリシャだと位置づけていますが、それはあくまでも考え方などの思考に関してのモノで、実際の文化面での影響は、やはり古代ローマからの遺産を受け継いでいると言って良いでしょう。
欧州の人は自分達がローマの子孫であると謳っていますが、支配地域や文化などで若干の違いが有り、それがローマの後継を名乗って居ながらも違う文化圏として成立している最大の理由では無いでしょうか。
今回の記事は、なぜ古代ローマと現代ヨーロッパが似て非なる文明であるかを考察した記事となります。
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では、古代ローマ帝国と現代ヨーロッパの違いとは、いったい何なのだろうか?
簡単に言ってしまえば、
ローマ帝国は「地中海と言う海洋ネットワークにより作られた古代世界屈指の超大国」であり、
現代ヨーロッパとは、「肌寒い北欧、温暖な南欧、大陸の影響のある東欧、海洋に面した西洋、ヨーロッパ半島中央部の山岳地帯などの、異なる自然環境に出来た地域の中小国家群が、キリスト教徒と言う宗教を軸に連合したかの様に見せている地域同盟」である。
この違いです。
★古代ローマ
上記で書いたが、古代ローマは地中海と言う海洋ネットワークと地中海気候と言う単一気候の地域に設立した国家である。
≪古代ローマ≫
元々はイタリア半島の中西部沿岸から発生した都市を首都とする共和制国家だったが、北アフリカにある都市カルタゴとシチリア島をめぐる紛争を行い、これを征した後に地中海世界を支配する覇権国家へと成長した。
カルタゴとの戦いは、地中海世界の海洋の通商を制するに当たり、最も重要な拠点であるシチリア島を何方の勢力が支配するかの戦いで、ローマが支配すれば「シチリア島とイタリア半島の間のメッシーナ海峡が安全な海洋通商ルートとなり、カルタゴとシチリア島の間のシチリア海峡が不安定になり、ローマ側が海洋優位を確立」、逆にカルタゴかシチリア島を征すれば「シチリア海峡が安定し、メッシーナ海峡が不安定化する」、そのためシチリア島をどちらが征するかにより地中海の東西海洋貿易を制する国が決まる事になる。
この地中海の覇権を掛けた三度にわたるポエニ戦争を制した共和制ローマが、長期安定の覇権国となり古代世界で繁栄を極める事なった。
古代世界で栄華を極めた共和制ローマは、後に終身独裁官の統治を受け入れ実質上の帝政に変貌し、皇帝の統治の下で地中海周辺の領域の悉くを飲み込んだが、結局は海洋貿易の影響する一定領域までしか支配下に置く事ができなかった。
特に肌寒い地域の当時異民族と呼ばれた北方民族のいる地域までは、文化圏や価値観の違いからか、支配下に置く事は出来ていなかった。
このため古代ローマの安定的に支配できる地域は、あくまでも地中海の沿岸地域の「ローマと似たような自然環境と、ローマと一定の距離しか離れていない地域」のみに限定されており、必要以上に拡大した領土は、手放す等の対処を行う事もしていた。
ローマ帝国の強みは海洋貿易を主力とする商業が活発だった事と、その通商を保護するのに必要以上の海軍を維持する必要が無かった事である。本来、大規模な陸上国境を要するローマは、軍事負担と言う意味で陸軍と海軍の双方を整えなければ成らないので、その防衛費負担は想像を絶するものとなるはずなのだが、地中海を完全に内海としていたため必要以上に海軍負担が掛からなかったことが推察でき、これがローマの防衛費負担増大に歯止めをかけていたと思われます。
しかし、小氷期に突入し、世界規模での気候変動が起こると、ローマ帝国も不安定化し、財政赤字がかさみ、異民族の受け入れから、国内の分裂や内乱が起こり、最終的に緩やかに衰退滅亡する事になった。
現在では、ローマ帝国から東西分裂した東部が後継国としてローマ帝国を名乗っていましたが、文化の違いからか日本ではビザンツ帝国とレッテル張りされローマ帝国とは認識されていません。また文化面ではイスラム帝国系国家が、ローマ文明を保存し伝えた事で、近世ヨーロッパのルネサンスが始まったと言われています。
★現代ヨーロッパ
現在の概念的ヨーロッパは、古代ローマ帝国の文明から発生し、多様な自然環境を要するヨーロッパ地域に成立し、キリスト教を国教とする国家群によって形成された地域一帯を指す。
≪ヨーロッパ≫
古代ローマと現代ヨーロッパの最大の違いは、古代ローマが「基本的に地中海文明と言う単一に近い自然環境から発生した文明」であるが、現代のヨーロッパを構成する地域は「多様な自然環境から発生した文化圏が有り、また多様性も確保され過ぎている」と言う点です。
そのため現代ヨーロッパでは構成する国家の文化が、北と南では違うモノと成っています。これが古代ローマ帝国であれば、本領と属州でもそれほど、文化などは変わりません。
現代のヨーロッパが一つにまとまっている容易見える最大の理由は、古代ローマから発生したと言われている幻想と、キリスト教を実質上の国教としている2点に集約されます。
基本、単一文明では無く多文化並列地域で、ヨーロッパ人であるという意識が有るのは、同じキリスト教国家であると言う点と、古来から「南部から来るイスラム教徒」と「東から来る騎馬民族」と言う脅威が有ったため、我々は奴らとは違うと言う同教徒意識を生み出した、主に二点が「ヨーロッパ人」と言うカテゴリーを生み出すに至った原因と思われます。
逆にヨーロッパの外からヨーロッパ全体を危機的状況に追いやる脅威が無ければ、団結する事の無い地域であるとも言えます。現にヨーロッパの力が巨大化し、外的など存在しない状況(主に帝国主義時代)になった場合は、欧州諸国内で頻繁に戦争を行っています。
★NATO(北大西洋条約機構)
現代のヨーロッパが古ローマ帝国とは、まったくとは言いませんが違う存在であると言う事を言いました。
ですが古ローマ帝国と同じような勢力が無いわけでは有りません。それは欧州とアメリカの軍事同盟である"北大西洋条約機構(NATO)"がソレに当たると思われます。
大西洋を地中海と見なし、欧州と米国の双方共に、現在の工業化の基礎が始まった「欧州の西欧」と「米国の東北部」は、海洋貿易による情報や技術の集積力と、夏冬の寒暖差から発生する手工業の発達からなる工業国化の二点の要素が同じようにあり、宗教も似たようなものであるため同じ価値観を抱く民族や勢力として成立する要素も満たしています。
これらは「同じ価値からなる文化」と「進んだ工業力」と「海洋ネットワーク」がローマ帝国の様な覇権国家の条件であると考えた場合、この北大西洋条約機構こそが現代のローマ帝国であると考える事も出来るのです。
この現代のローマ帝国は、かつての古ローマ帝国と同じ弱点を抱えており、海洋貿易を支配する勢力であるにもかかわらず、陸上国境を守らなければ成らない負担を有しており、もし現在の世界規模の好景気経済の崩壊と、陸軍と海軍の軍拡が重なる様な事が起これば、古代ローマ文明の崩壊と同じ事が起こり得る可能性を有しています。
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以上が「古代ローマ帝国」と「現在のヨーロッパ」と「北大西洋条約機構(NATO)」の比較及び考察をさせていただきました。
いつも通りこの考察は、ブログ主の主観バリバリで書かせてもらっている事なので、間違いが有るかもしれません。ソレを前提の上で読んでください。
本日は以上です!
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