タンカー

2019年06月30日

今回は、安倍首相がイランに訪問した件に関しての考察となります。

現在巷で話題になっていますが、今回のイラン訪問は、米国とイランが核開発で対立している状況に干渉し解決の糸口を作るために行った事と言われています。

これは北朝鮮も関係のある事で、イランが北朝鮮から核技術を供給されこれによって核兵器で武装した場合、中東のパワーバランスを激変させ米国の国益を毀損させる恐れがあるため、米国が主導する形で経済制裁を行い、日本もこれに巻き込まれる形で付き合わされている問題です。

日本は昔からイランと付き合いがあったため、この経済制裁にも乗り気では無く、余り参加しようとしていませんでしたが、ここに来て米国からの圧力が強くなった事も有り、原油の調達先からイランを外してしまいました。

ただ原油の調達が不安定になるのを恐れたのか、北朝鮮に連動した何らかの戦略を行おうとしている為なのか、この混乱を解決する為に日本が中東情勢に介入する形で交渉役を買って出る事になりました。

今回の安倍首相のイラン訪問は、その様な環境の下で行われた事で、ロウハーニー大統領や最高指導者ハーメネイー師と会談し、核問題の解決は不可能でしたが、緊張の緩和と言う意味においては一応成功させたと言える状況を作り上げました。

只この会談の最中に、日本の会社の石油輸送タンカー(パナマ船籍)が、オマーン沖において攻撃を受けると言う事件が起きました。この事件の影響で日本とイランの関係に楔が撃ち込まれるのでは無いかと言う推測も出ているのですが、日本側の態度は攻撃を仕掛けた勢力がイラン政府と結びついているのかの確証が無いため、断言をする事を避けたのです。

米国は、このタンカー攻撃をイランの仕業であると言う結論の下で訴えましたが、日本としては表向きこの事件でイランとの仲を改善しようとした努力を無に帰させられたく無いとの姿勢を示し、イラン政府が関わった証拠不十分との認識の下で、米国の意見を一蹴しイランの批判に組しませんでした。

戦後から現在に至るまでの間、日本が米国と対立するかの様な態度を取った今回の例は、極めて珍しいのでは無いでしょうか?

何故この様な米国の認識を突っぱねる態度を日本が取る必要があるのでしょうか?


★タンカー攻撃の疑惑
今回の日本企業のタンカー攻撃事件は、米国が言うには「イラン革命防衛隊によるモノと言う疑惑」があるそうです。

ですが核問題でイランと争っている米国がこの様な事を述べている事から、この件を軸に日本とイランの関係に楔を打とうと言う意図が想定できてしまい、またタイミングが余りにもあからさまであった事から米国の言い分を信用しない人も居るようです。

米国がイランの謀略であると言う訴えを行っても、過去に米国がベトナム戦争の発端となったトンキン湾事件で奇襲を受けたふりをして戦争を吹っ掛けたり、9.11のイラク戦争でもイランの兵器保有の捏造し戦争正当化の出汁にしたりした前例があるため、この過去の行為が足を引っ張り今回の米国の発言の信用を貶めてしまっているようです。

ただし日本はあくまでも証拠が無いので指さししてレッテル張りする行為は行わないと述べているのであって、イランが現地の治安維持を行えていない為に起こった事件である事は確かなので、その件に関して注意を述べるぐらいは行っていると思われます。

これらの事を含め今回のタンカー攻撃疑惑が如何なる反応を期待してなされたモノなのかを考えた場合、幾つかの可能性が考えられます。


①イラン政府が行った
まず第一の可能性が、米国が述べた通りイラン政府の支持の下で行われた可能性です。いかに日本が武力行使に及び腰な国家であったとしてもこの様な事を行われれば、心証はよくありませんし、米国との間を取り持とうとしている国にこの様な事を行えば、今後米国との仲を取り持ってくれる勢力が及び腰になり、講和自体が出来なくなる恐れがあるため、イランとしても理に成らないと考える事ができ、可能性としては低いと思われます。

イランの米国に対するメッセージと語る人も居ますが、いかに死人が出なくても関係を取り持とうとしている国の企業に対してこの様な事を行えば、国際的に見ても外聞が悪すぎますし、仲の悪い国に対して行われていると考えればある程度も納得できるのですが、日本とイランの関係は第二次世界大戦後の国際社会復帰頃からの深い繋がりがある事を考えれば、現状でも親イラン的な態度を表明し続けている日本との関係を破壊するのはイランから見ても割に合わないと考えられます。


②イランの権力抗争の結果
第二の可能性がイラン国内の権力闘争の結果生じた事件である可能性です。今回タンカー爆破を行った勢力がイラン独立防衛隊と言われており、これは政府の保有する国軍とは別に最高指導者(宗教上の)によって創設された軍隊です。

王国時代から存在している国軍を抑止する目的で創設されたため、もしかしたら国軍と関係が良くないの恐れもあり、その関係の摩擦により今回外部(日本)からの問題(タンカー爆破)を呼び込んで、国内で何らかのショック療法を起こそうとしている可能性も予測できます。

例えば、より民主化する為の国内情勢を促すために、宗教指導者直轄と言えそうな独立防衛隊にこの様な問題行動を起こさせる事により宗教的権威を落とし、独立防衛隊を解体に持って行く事による宗教色の希薄化を行おうとしていると言う考察も成り立ちます。(もしくはただの勢力争いか?)


③テロリストが行った
三つ目の可能性としては、国家勢力が加担しているのでは無く、イランと米国の対話を望まない何処かの勢力が仲介役の日本とイランの関係を悪化させようとして行ったテロ行為である可能性です。

とは言ってもイラン国内で原油を売れない状況が続く事を望む者がいるとは考えられないため、この可能性は少ないと考えられます。


④米国が行った(戦争特需のため)
第四の可能性は、米国がテロのフリをして今回の事件を起こした可能性です。すでにベトナム戦争や9.11以降の対イラク戦争の時の情報操作と言う前例があるため、この様な謀略論が出てしまうのは致し方ないと思えますが、どうも米国がタンカー爆破当時に軍隊を動かせる準備を行っていたために、この手の疑いを掛けられてしまったようです。(今までの米国の行動から仕方ないと思えますが・・・)


⑤日本が行った(原油の調達先の多様化のため)
第五の可能性としては、日本側が自国企業のタンカーである事を理解してワザと爆破した可能性です。これは二つの理由が考えられ、一つは原油購入先の多様化で、国内のエネルギー時給が中東一辺倒の現状を憂いた日本が、今回の事件を仕組んで中東の危険性を知らしめると共に、輸送の危険性からイランやサウジアラビアからの輸入を絞る出汁として利用しようとしているのでは無いかと言う疑惑です。

これが成立すればロシアや米国からの輸入を増やし、かつ中東諸国の治安維持能力の低さからなる輸入先の多様化を正当化できるため可能性としては有るのですが、やはり格安の原油を輸入できなくなる恐れもある事から可能性としては薄いと思われます。(つまり米露の対中外交を予測した上で、日本の勝ちを高め用と言う意図があって行っている可能性と言う意味です)


⑥日・米、もしくはイランも加えたプロレス
最後の可能性が、上記で述べた日本が関わっている理由のもう一つとも関係が有り、日本・米国、もしかしたらイランも含めて、共に落としどころを考えた上でのプロレスである可能性です。

今回の事件で、イランは日本に迷惑をかけ自国で面子を潰しましたが、それでも日本はイランを見捨てずに講和や核問題のための交渉を行う事を明言しています。日本は今後もこの中東の件にコミットメントする事になるでしょう。この様な状況で日本の好意的態度を突っぱねれば、「アメリカの面子を潰して自国企業が被害に遭ってでも講和の為に動いている日本の面子」をも潰してしまう事になり、国際社会や国内でも批判に晒される恐れが出てきます。また経済も苦しいです。

日本としても原油の安定供給を考慮すれば中東の安定は必要事項となりますし、今後インド太平洋を発展させると明言している日本としては、エネルギーの供給基地となる中東の安定は必要事項となります。

米国としても中国と相対している現状で中東の混乱に巻き込まれるのは避けたいところで、もしペルシャ湾で混乱が起これば、ドルの裏付けに成っているサウジの原油が輸出できない状況となりドル需要が少なる成り通貨安になる恐れもあり、金融危機以降の量的緩和によりバブル経済化してい居る米国としては、その様な事が起こればバブル崩壊の悪夢を体験する羽目に成る恐れがあり、その様な状況は避けたいと考えるでしょう。

この事から三国共にいい加減に抗争状況を止め安定させた方が良いと言う結論に行き着くはずです。

このため今回の会談と事件は、三者とも面子を潰したり損害を被る事によって「これ以上は礼儀の面からもまずい」と言う状況を作り妥協に導こうとする暗黙の了解である可能性も有ると考えられるのです。


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以上で「日本×イラン会談とタンカー攻撃」の事件の一考察となります。

最後の可能性は、中東の事だけでは無く極東情勢も見た上で、国々のパワーバランス考慮し推測した結果、こういう事では無いのかと導き出した考察となります。

無論この考察の通りでは無い可能性も十分ありますので、それを前提の上で閲覧してください。

本日はココまで!

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