デジタル通貨

2019年12月15日

今回は中国の通貨、"元"に関しての考察となります。

中国の"元"と言えば、世界第二位の経済規模となった中国で発行されている通貨(紙幣)となります。

基本的に通貨とは、発行国の生産力やサービスの供給能力が価値の裏付けとなって発行されています。そのため今まで発行されてきた"元"の総量が、イコール(=)、現状の中国の生産力の総計ともなっている筈です。

現在中国では、この"元"を基軸通貨として確立させようとした数々の政策を行い、その結果として米国との対立を深めていると言われています。

そして、その数々の政策として取り上げられるモノとして、

第一に、他国を経済的に援助し、代わりに"中国元"を決済通貨として使用させる事により、第三国で"元"を使用される状況を作り、それによってその第三国の生産力を"中国元"の裏付けにすること

第二に、国際通貨基金のSDR(特別引出権)を構成する通貨に加わり、国際決済通貨候補としての立場を補強したこと

第三に、デジタル人民元(暗号通貨)を発行する事により、セキュリティと売買情報に置ける信用の面での強化を示し、人民元の世界的な流通を加速させようと言うこと


と現状でこの三点が挙げられます。


①他国への援助
まず第一に取り上げた他国への援助ですが、これは「人民元を他国に使用させる事によって、その国で人民元決済が決済の基本になる環境を作り、該当国の経済力を人民元の裏付けとして利用する戦略」として機能させるために行っているものと考えられます。

この戦略が機能する為には、通貨発行国の商品なり、サービスなり、また技術や知財等が該当国に使用され、常に該当国が人民元を求める環境を作る必要性が有ります。

ですが、現在の中国の輸出品目を見て見ると、知財や技術が主には成ってはおらず、他の発展途上工業国でも作れるような最終組み立ての商品が多くなっています。

そのため「中国国内の他の先進国から誘致している工場等」が撤収する様な事が有れば、中国はたちまち他国に輸出できる商品の枯渇に陥る事になると考えられます。

そうなれば貸し付けたり支払ったりして、他国に流出させた人民元が、一度だけしか使用されず、ただ一度の支払いで中国に戻り二度と他国に流通される事が無い状況に陥る恐れが有ります。

他国から求められない通貨では、大量にあるだけでは発行国にとって悪性インフレーションの原因にもなる厄介事に過ぎません。

もし中国が知財や技術を生み出す事が出来ないのであれば、人民元の世界にばら撒く戦略は、中国の通貨覇権の確立では無く、中国経済の失墜になる恐れも有るのです。


②SDR10%と決済通貨としての利用率
第二に取り上げたSDR(特別引出権)への加盟戦略ですが、これも見ようによっては現状の中国にとってはマイナスに成る恐れが生じてしまいます。

そもそもSDRとは、国際通貨基金が国家レベルでの緊急時に貸し出す、「構成国の通貨をバスケット制にまとめた疑似通貨」を指しており、中国はこのSDRに約10%の比率で通貨を供給する事になっています。(現在の主な構成国は、米国、EU、中国、日本、英国の五国と成っています)

つまりどこかの国が破綻した時、国際通貨基金が緊急支援を行いますが、その場合中国の人民元が一割の割合で融資される事を意味しているのです。

これを見るだけなら、それほど問題無い様に思えますが、実は問題が有ります。

何故ならば、中国の発行している人民元の国際決済通貨としての利用率が2%~3%程度だからです。

国際決済通貨として多くても3%程度しか使用されていないと言う事は、国際社会は中国から人民元を使用してでも購入したいと考えているモノがその程度しか存在していない事を意味しています。

にも拘らず、金融危機等で支援を欲し、緊急時の貿易を滞らせたくないと考える支援受け入れ国に、10%の比率で融資すると言う事は、その融資したSDRの内訳の内の10%人民元分を使用されると言う事を意味しているのです。

中国側としては、「緊急時の物資の輸出」や「金融面での支援」として人民元を使用されてしまい自国に人民元が還流する事が予測できてしまうのですが、国際決済通貨としては3%しか使用されていない人民元を介した商取引では、SDRで供給された人民元分が多すぎるため、還流を受け入れた中国側で通貨の過剰供給に陥る恐れが生じ、インフレーションが起こる可能性も出てしまうのです。

無論その国の供給能力を超えた通貨の流入が生じれば、只の物価高に陥る恐れもあり、中国国民から見れば必ずしも良い事とは言えない事になります。


③デジタル人民元(暗号通貨)
第三に取り上げた「デジタル人民元(暗号通貨)」の発行に関してですが、これは俗に言うビットコインの政府発行版を考えて頂ければよいと思われます。

ビットコインと言えばひと昔前に話題になりましたが、中国ではこれを政府が行ってしまおうと考え、推進している様なのです。

この暗号通貨ですが、セキュリティと言う意味では、極めて先進的なシステムですが、上記の二点で述べた様な「その国の生産力を担保とした通貨発行と維持」を考慮した場合、必ずしも効果的であるかどうかは確証できません。

中国国内のみで使用するのであれば問題は無いのですが、人民元の国際化を行い始めている現状の中国では、いざ海外に流出させた人民元を使用される時、「中国国内でのインフレが怖いので使用しないで欲しい(人民元支払いはしないで)」等と言う事は言えないからです。

暗号通貨の利点は、あくまでの情報セキュリティと運用の問題ですので、その点は間違えないようにした方が良いと考えられます。

しかもこのデジタル人民元なのですが、実は日本の企業が先に発行してしまう事が確定してしまいました。

しかも他の「他国のデジタル通貨と交換可能」と言うサービスを引っ提げてのデジタル人民元供給となるようで、人民元と交換できるデジタル人民元を介して、他国のデジタル通貨を購入すると言う形で、中国の富が流れる恐れが有り、中国政府も上手な対処をしなければ、資本逃避を誘発してしまう恐れが出てしまいます。

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以上で「中国、人民元覇権の終焉」の考察を終了させて頂きます。

正直人民元に関しては、現時点で完璧な国際決済通貨にも成っていないのに、米国に他行しようとして無理矢理な世界に対するバラマキや拡大を行おうとした結果、中国経済を破綻させる原因として機能する恐れがあり、予断を許せない状況に成っていると予測できます。

特に海外で本格的に使用され始めれば、国際市場で消費される人民元が増えるので、中国国内のみでの税制度だけでは、通貨価値の統制が効かなくなる恐れも有り、「中国にとっては世界戦略を考えて実行したのは良いが、中国破綻の原因になった」というブラックジョークになる可能性も有るのでは無いかとブログ主は考え初めています。

今後どうなるか、注視したいと思います。


なお当ブログで書かれている事は、ブログ主個人の見解に過ぎませんので、間違いなどが有るかも知れません。それらのリスクを前提の上で閲覧してください。

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