二大政党制

2019年02月22日

今回は、日本の政治政党の多様性と地政学的なバランシングの役割分担に関する考察となります。

大航海時代から台頭し始めた海洋覇権国の世界を視野に入れた政党政治によるバランシングから、今後の日本の国内政局までの事を、国外の外部環境から考察できるのでは無いかと思い今回の記事を書かせてもらいます。


さて、民主主義において国民の意思を代表する政治家が一定の主義主張を持って集まったチームが政党である事は、民主主義下で暮らしている国民であれば分かる事と思いますが、多くの人はこの政党と言う存在を「多様性のある国民の意志を反映する為に分離独立している政治家の集団」と認識しています。

しかしそれは正しい認識なのでしょうか?


ブログ主は若干違う意見を有しており、「政党と言う存在は、外部環境の影響を受け作られる"国家が外部に影響を与えるための政治家の集団"である」との認識を抱いています。

これは一部の人が言っている様に、海洋国家の特に英米の議会制政治における二大政党制による外交の変節戦略から導き出せる考えです。


この英米の二大政党制とは、基本二つの大勢力の政党だけで議会を運営している状況を指し、それ以外の勢力があったとしても、その他の弱小政党が全く影響力が保持できていない状況も含まれています。

日本の現状での多党状態は、三つ若しくは四つ以上の政党の議席がある程度拮抗している状況を指すもので、より多くの国民の意見を汲み取りやすいと言う点では優れていますが、パワーバランスが分裂し過ぎて政局が前進しない等の弊害もリスクとして有ります。最も一応現在の日本の様に自民党勢力の議会下半支配の状態に成って居れば、ある程度の安定は確保できるので、多党状態の全てでその様な停滞状態になるわけでは無いと思われます。

日本では、今までも英米の様に二大政党制に移行し政治を行うべきだと言う言論人も居ましたが、残念ながらそれが実現したのは、10年前の自民党と民主党の二大勢力があった時くらいで、結局その状況も長くは続きませんでした。

何故英米では二大政党制がある程度は定着し、日本ではそれが不可能だったのでしょうか?

ブログ主が考えるに、その理由は「地理的な国家の位置関係」「国際社会での国家の立ち位置と国力」「近隣諸国の状況」に問題があると考えられます。


★覇権国家の二大政党制
もそもそ英米における二大政党制が高く評価されるのは、二大政党制が内政政策の均衡を取る上で優れているからでは有りません。多くの人は、政党政治が国民の意見を反映する指標として認識し、その政党の保守と革新からの得票率が「国民が政治家に対して国家を運営して欲しい時の指針」として成立すると考えています。

ですが現実問題として国民がどの様に国家を運営してほしいと考えていても、外部環境により国民の意見を聞き入れる訳には行かない場合には、国民の意見などは無視される事になります。

例えば食糧価格を低下させる政策を要求したとしても、ソレにより不必要に人口が増え、将来的に飢餓状態に成るリスクが生じるのであれば、政治家は安易にその様な政策を行う事はしません。この様に国家運営では「国民の欲望さえ満たせれば成立する」などの綺麗事では済まされない、ある種の冷淡さが必要となるのです。

そのため国政における国民の意見の反映などと言う要求は、基本的には必要最低限で押さえなければ成りません。


ではなぜ民主主義国家において政党制などと言う制度が必要とされるのでしょうか?

何故海洋覇権国家である英米の二国で、二大政党制と言う制度が成立し覇権国家になる上での成功を収める原動力として機能したのでしょうか?

無論「国民の意見を聞くため」と言う理想の実現が必要である事は確かですが、真に必要な理由は、「海外からの影響を柔軟に受け止めるため」と「海外に影響を与えるため」の二点の理由からだと考えられます。

基本的に英米において二大政党制が成立し運営されていた時期は、イギリスが大英帝国であった時期、そして現状では米国が超大国化した時からです。


この二国に関しては、イギリスの二大政党制の原型は1600年代に作られ始め、1700年代には現在で言う議院内閣制の政治形態がとられ、それ以降の1980年まで二大政党制による内政外交を行っています。現在では1980年代に成立した自由民主党の第三勢力が出現し、国政に関わる様になっています。

この第三勢力が成立するまでの間は、イギリスが南西に位置するヨーロッパ諸国に対してバランシング戦略を取り対外政治戦略を展開していた頃です。

英国にとってはヨーロッパと言う存在が東から南に掛け存在し、英国への進出リスクが常にあった為、欧州内の内紛に介入する事によって、英国に割く軍事リソースが投入されない様にする外交が必要でした。

そのため孤立主義を取っていた英国は、「ヨーロッパに介入するか否か」の政策選択を常に迫られていたため、欧州諸国の全てを敵に回さずに尚且つ干渉するか否かを選択する為の、「欧州諸国と自国民に対する弁明のための政策変更を政権交代と言う形で行える大義名分」が常に必要な状況であったと言えるのです。

そのため投票と言う形で政権を変更させ、ある程度の政策変更を急激な形で行っても文句を付けられ難い二大政党制と言う政策変節制度が必要であったと考えれるのです。

現在のイギリスで第三の正当勢力が成立したのは、単純に他国への干渉と非干渉の二つの政策で外交を行う訳には行かないため、三つめの道を選べるような外交政策を行える国内状況を成立させる必要があった為だと考えられます。

国家における政策変更は、諸外国にも混乱と言う形で影響を与える事も有るため、混乱状況に巻き込まれるであろう諸国からすれば、正当な理由で変更してもらわなければ心情的にも外交的にも納得は出来ないはずです。ですが国民の意思と言う大義名分があれば、国際条約等の国対国の約束事でない限りは諸外国も納得せざるを得ないでしょう。


米国では南北戦争が終了し超大国化し始めた事から現在の二大政党制の原型が出来上がっており、南北戦争以降の繁栄とその繁栄した富を利用してのユーラシア諸国に対するバランシングを行い、現在までの間二大政党制による変節外交を行っています。

米国は英国が覇権国家に成った時とは違い一方方向にだけ敵を抱えている訳では有りませんが、陸上国境では敵に成りそうにないカナダとメキシコの二国に面しているだけで、それほど複雑な外交をする必要は見いだせませんし、海を挟んだユーラシア諸国に対しても、干渉するか否かのどちらかを選ぶだけですので、単純な二大政党制のバランシング外交で事足りるのでしょう。


これ以外にもイギリスから発生したカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国も二大政党制ですが、カナダは米国と同じで国境を接しているのは米国だけで他は米国と同じ環境下に有りますので、米国と同じ単純なバランシング外交となる筈です。オーストラリアとニュージーランドの二国に至っては島国であり、やはりオフショアバランシングが国家外交の基本戦略と成るので、すぐに変節できる二大政党制がベストの政治体制と考えれます。


これが大陸国家の場合は、大陸深部に行けば行くほど一党独裁に近い政治体制に成りますが、これは大陸国家の場合、周囲を複数の国に囲まれ国境を接しているため、不用意に変節的な外交を行えば紛争の原因にもなるからだと考えられます。


では日本は如何なのでしょうか?

日本に二大政党制は必要な政党体制なのでしょうか?


★今の日本に二大政党制は必要ない
日本は英米と同じで海洋国家で島国ですが、英米が覇権国家と成った時とは違い、周囲を三つの超大国に囲まれています。そのため二大政党制にした場合、三つに国の内の二つの意見を代弁した外交しか行う事が出来ず、残った一国に影響を与える外交を行えなくなります。

そのため日本がバランシング外交を行うに必要な政党の数は、最低でも三党は必要となるため、現在の日本には二大政党制は不可能と考えられます。

しかも三国すべての国が日本以上の軍事力を有しているため、単純に影響を与えたい国家とつながりを持つ政党の政策が実現できれば良いと言う訳でも有りません。何故ならどこか一国の国益になる政策を行っても、その政策を行われたら国益を害されると感じた他の二国が軍事力をチラつかせ脅してくる恐れもあるため、いざと言う時は政策を変節しなければ成らない事もあると思われるからです。

そのため、例えば米国の影響を考えた自民党が親米国寄りの政策を行おうとしても、中国とロシアの影響を考慮した国家としてその政策変更を行おうとした場合には、行おうとしている政策を米国の面子を潰さない形で変更させねば成らない事もあると思われますので、常に自民党に引っ付くようにして政策の成否に関与できるような政党が必要にもなのです。

現在では公明党がその役割を担っていると考えられ、その様な対外政策のバランシング等を考えた場合、議会にある程度の影響を及ぼせる政党が4~5党は必要かと考えれます。

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次回はこれらの事を前提の上で、日本国内の正当勢力の役割などを考えてみたいと思います。

本日はココまで!!

なお今回の記事の間隔が前回から空いたのは、前回の記事の閲覧数が今まで以上に伸びたため様子を見ていたためです。


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