覇権押し付け
2019年07月28日
前回(米国の不満)からの続きです。
リンク≪米国の不満不公平安保と軍事負担≫
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★時系列でみる日本の対応
では前述の「時代ごとの米国の軍事負担の変容」に対して日本はどの様な対応を取ってきたのでしょうか?
まず"①"の朝鮮半島危機までは、日本の軍事力自体が崩壊していたため、米国に防衛を依存するのはやむを得ません。
"②"高度経済成長やベトナム戦争頃の世界では、日本国内で社会主義運動が活発化したため、安易に日本に軍事力を高めさせると、「日本が裏切った時の米国の負担が大きくなるため」、また「日本の経済復興を優先するため」の二つの理由から軍事負担を背負う必要から解き放たれました。
この頃の日本は、他の自由主義陣営の先進国に比べて人件費が低かった事、軍事負担が少なくその分経済にリソースを投入できた事の主に二点から、低価格品を他の先進国(主に米国)に販売する事で、多くの外貨を稼ぎ国力を充実させる事に成功しました。
"③"のニクソンショックから始める「ドルの金交換破棄と石油交換券化」の時は、日本は適応する為に通貨高による高付加価値の産業投資を行い、より付加価値の高い産業を起こすと共に、信用を得た"円"を利用し原油の輸入量を拡大し消費と投資の拡大を行いました。当然原油決済自体にはドル支払いで行われ、ドルが世界で使用される下地作りを援助し、米国がドルの信認を守るために原油供給のための海洋ルートを守らなければ成らない環境確立に貢献しました。
プラザ合意後は、積極的に米国債を購入しドルの価値が暴落しない様にしつつ、冷戦後から始まるグローバル世界に対して、バブル崩壊による不況を演出してまで国内でマネーを溜め込ませ、そのマネーをホットマネーとして海外に流出させる事で海外の経済を活発化させ、世界中の国々を好景気にしました。
これによって"④"で述べた、世界中の国々が超好景気下で「自国だけで自国の消費力を満足させられない状況」に追いやり、全世界で石油引換券であるドルを使用させる事に成功しました。このバブル輸出により米国が貿易決済にドルを使用してくれる国々の為に、全海洋ルートを守らなければ成らない状況に追いやったのです。
同時に将来の米国の敵となり得る中国に大規模投資を行い、大国化を促進させるととともに自国が冤罪を被る事による「中国のナショナリズムの増大」を誘発させ、「日本を守らなくてはドルと貿易通商路の安定が出来ない米国」と「自国民を養うために対外進出をしなければならない中国」との対立が煽り、米国に更なる軍拡負担を押し付ける事になりました。
この様に日本に関わったが為に、
「日本の防衛」→
「日本の周辺にある諸国を社会主義陣営から守る」→
「中東からドルを原油引換券として利用してくれる国への海上輸送ルートの防衛」→
「ドルを貿易決済通貨として使用してくれる国が使用する海洋ルートの防衛」→
「米中対立」
へと防衛負担が増大する事になったのです。
この様に米国が世界に深入りし一国で世界経済を守らなくて貼らない状況に追い散った要因として、
「冷戦の軍拡競争による過剰支出」
「ドルの信用失墜を避けるための原油引換券化」
「日本による米国債買取から始まるバブル輸出」
「軍拡支出やドル高による米政府の赤字拡大と国内経済の対外依存」
「ドルの世界通貨化」
等が挙げられます。
米国から言わせれば「日本の防衛に関わったが為に、全世界を守らなくては成らない負担にまで拡大したのだから、日本も米国が背負っている軍事負担を分かち合うべきだ」との意見を持ったとしてもおかしな事では無いと考えられます。
★米国の自業自得
では上記で述べた「米国が世界の貿易システムの維持と保護負担」を押し付けられた事に関して、確かに戦後米国の立場で見た場合は、不公平な負担と思えなく有りませんが、これを第二次世界大戦前まで遡った場合、必ずしもその様な認識には至りません。
これは当ブログでも述べている様に、戦前の米国はユーラシア大陸から離れた立地を良い事に、ナチスドイツや中国に援助を行い、独中両国が"米国に隣接する、米国の潜在的な敵国"に戦争を吹っ掛ける手助けを行い、米国に隣接する国々(日英仏)が米国に軍事リソースを向けれない環境を犯罪的手法で確立していたからです。
このオフショアバランシング政策は大英帝国が覇権を握ったのと同じ構図となります。
恐らくはその結果、戦後に周辺国に敵国として認識されている可能性を考慮し、ユーラシア内部の共産主義勢力に走られない様にするための防衛負担を被らざる得ない事になったのだと考えられます。
その後に世界情勢に引きずり込まれたのであれば、正に自業自得であると言えなくも有りません。
その環境を日本に利用され、ドルを全世界にばら撒かれて、ついには世界の治安を維持しなければ成らない状況に追い込まれたのだと考えられます。
関連リンク
歴史で見る米国の地政学シリーズ
米国1 約束された超大国アメリカ
米国2 悪のアメリカ
米国3 勝ったと思ったら負けていたアメリカ
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★米国の国益は負担を分かち合う事
ではこのままの状況が未来永劫続くのかと言うと、それは不可能であると考えられます。すでに絶頂期を通り抜けた米国の国力は、全世界の比率で言えば20%程度にまで落ち込んでおり、かつて世界生産力の半分を一国で占めたほどの影響を持ちえていません。
米国には広大な国土と資源があるため持久力は有りますが、全世界の治安維持を行い続けるほどのパワーも有りません。平和であれば問題は無いかも知れませんが、自国に迫るパワーを持つ敵対勢力が次々と現れ邪魔している現状では不可能であると言えます。
そのため米国は軍事負担を減らすために、同じ海洋貿易で安全保障を分かち合う国と同盟を組み、負担を分かち合う事が国益になります。
NATO(北大西洋条約機構)は正にそれで、同盟を組んでいるヨーロッパ諸国は米国から見れば軍事負担が低いものの、一応は同じ戦場に向かい血を流す事をしています。
ネックは日本で、日米同盟は存在しているものの軍事費負担は、日本はGDP比率で約1%、米国はGDP比率で約4%に達しており、著しく米国に負担がかかるバランスで運用されています。
軍事と言うモノは民需の生産には寄与しないモノですので、軍事負担が多ければ多いほど物価にインフレ圧力が掛かる事になり、インフレに対応する為に無理な投資や海外からの安い物資に頼らざるを得なくなり、経済の過剰投資や対外依存を加速させる事になり、国家としての自立性を失ってしまいます。
(過剰投資が行われれば金回りが良すぎるため消費や人口が増えすぎる可能性が有り、そうなれば海外からの物資をより多く調達しなければ成らなくなり、対外依存率が上昇するのです)
米国にとって対外依存率が上昇すればするほど世界の治安を維持しなければ成らなくなり、その財政負担からなる赤字支出から更なる対外依存に陥り、最後には米国と言う存在が、より大きい世界と言う存在によって溶かされ吸収されてしまう事に成り兼ねません。
その様な事態を避けるためにも、他の国にも公平な負担を被ってもらう事により、財政支出の負担を避ける政策を行わなければ成らないのが現在の米国なのです。
特に日本に軍事負担を被ってもらうのは絶対に必要なのですが、どれだけ圧力を加えても「第二次世界大戦で"悪"と定義付けられた事から生じる国民の"軍拡拒否感"や"世界情勢の混乱に巻き込まれたくない感情"」に関しては拭い様が無く、この点に関してはGHQの行った日本を悪とする占領統治が現在の米国に対してマイナスとして作用したものであると考えられます。
そのため今後米国などの日本に日本周辺の治安維持のための軍事負担を負ってほしいと考えている国は、日本に対して
「愛国心を煽る」
「使命感を煽る」
「大国意識を煽る」
等の情報工作を行うのでは無いかと考えられるのです。(現在でもすでに行っていると見なせる事象は幾つも有ります)
これらの情報操作は米国だけでは無く、日本と敵対したくない国も同じように仕掛ける可能性が有ります。(その筆頭として挙げられるのが中国となります)
関連リンク
★日本は負担を被るべきなのか?
では上記の米国の置かれた負担に対して日本はどの様に対応すべきなのでしょうか?
これに対し、ブログ主は「ある程度の負担を被るべし」と言う認識を抱いています。
理由は二つあり
一つは、負担を被る事により「米軍に対しての軍事維持補完力の拡張」を行う事で、米国がいざ日本と戦う事になっても、「日本が居なければ日本と戦えない」と言う環境を作る事によって、米国から主敵扱いされ難くなります。
二つ目は、現在日本が行っていると思われる「米中露の三大国に侵略経路を提供しての軍拡競争を煽る戦略」は、アメリカ・中国・ロシアの三ヵ国が存在しパワーバランスが取れていることが前提なのですが、もしどこか一つの国でも崩壊してバランスが崩れれば成立しない戦略なのです。
この事から現在の三大国競食状態が成立しなくなった時、米国が極東の治安維持をから手を引く可能性が有り、その様な状況成った時の治安維持を考えた場合は、今のうちに治安維持力を拡充しておく必要性が有ると考えられるのです。
そのため日本もある程度の負担を被り周辺地域の安全保障に力を尽くした方が良いと考えられるのです。
ではどの様な事を行えば良いのかと言うと「"改憲"よりも、"実際の軍事力の整備"」が必要と考えられます。
ではどの様な整備が必要なのか?と言えば、これは安易に軍事力を増やすと言うよりも「自国と敵対する大国側に日本が走られた場合、その敵対的同盟勢力内での国ごとの弱みを補完し合われたら面倒だ!」と周辺大国に思わせる様な軍事整備が必要になると言う事です。
現在有名なのが「日本の通常動力潜水艦の隠密能力」がこれに当たり、「日本が世界一の静音性の潜水艦を有していれば、中露二国の自国の支配海域に核兵器搭載の原潜を配備しての対米相互確証破壊戦略が行い難くなる」と言うモノです。
日本がこの静音性世界一の潜水艦を有して居れさえすれば、日本と同盟を組んだ国が相互確証破壊戦略に一定のコントロール権を有するようになり、極東における勢力争いを優位に進める事が可能となります。
米国が日本と同盟を組んだままで居れば、日本の潜水艦能力を生かし、中露の原潜戦略を破綻させれる可能性が大きくなり、中露が日本と同盟を組めば、太平洋全域に原潜を沈める米国に対しては無理だとしても、自国の原潜を日本に防衛してもらったまま、ロシア又は中国の原潜に対してちょっかいを掛ける事が可能となるのです。
この様に「日本に敵側に回られたら、最大の脅威の弱点を守る盾として動かれ、自分達の安全保障に不備が生じる。そして日本が味方でさえいれば、自国の手が回らない部分を何とかしてくれる」と思わせれれば、例え米国が中露のどちらかを打ち倒しバランスが崩壊した後でも日本と同盟を組む必然性が出て来て、日本が一方的な敵視を受ける可能性は低くなると考えられます。
この事から周辺諸国の弱点を補完する様な、軍事力の整備はある程度の規模で行った方が日本の安全保障に貢献できると考えられるのです。
★「日本は自立してほしい」と言う思いは、日本を下に見ないと言う事
ここで話を一番初めに戻すと、トランプ大統領の述べている「不平等安保発言」等の日本に対しての文句は、ある意味日本に対しての負担押し付け競争の敗北宣言と言えます。
同時に日本を対等に見て格下に見ない事を宣言したも同然で、今後は日本国民に対して日本国民に対して着せて居た汚名を如何にして雪ぐかの情報操作を行い、日本国民のプライドや自立心を刺激してくる可能性が有ります。
これを如何にしてとらえ次の行動に移すのかで日米の未来が決まるのでは無いかと考えられます。
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以上で全二回に渡り述べさせていただいた「米国が不公正と考える日米安保条約」に対しての考察を終了させていただきます。
無論、あくまでもブログ主個人の見解に過ぎませんので、もしかしたら間違いが有るかも知れません。それらのリスクを考慮した上で閲覧してください。
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2019年07月26日
今回は、米トランプ大統領が「日米安保条約の不公平」や「米国が日本の為に血を流す覚悟が出来ているにも拘らず、日本人が米国の為に血を流さない現状」を取り上げ不満を訴えた事に関しての考察となります。
事の問題は、第二次世界大戦後の敗戦から連合軍(実質上の米軍)の統治から脱却し、国際社会に復帰する時に結んだ米国との安保条約が、既に時代にそぐわないものになっている事から今回のトランプ大統領の不満に繋がっていると言われています。
これはトランプ大統領のだけの不満では無く、米国の政治家や軍人が等しく抱いている不満と言われており、日本国内の言論人や元自衛官の人も、「日本が危機的状況に陥った時に米軍を矢面に立たせ、米国が危機的状況に成った時日本が支えない現状の安保条約」を日米関係の友好の面から余り良いものとは考えていない事が露わに成っています。
日米安保条約は、サンフランシスコ講和条約で日本の国際社会への復帰が採択された時に裏で結ばれた条約で、当初は米軍が日本に駐留するだけで「日本防衛の責任さえ無い上に、どこにでも基地を置ける」と言う日本に著しく不利な不公平な条約でしたが、1960年に失効され"新安保条約"が結ばれるまで存在していました。
新安保条約は、旧安保条約に比べると米軍による日本の防衛が約束されてモノで、現在米国が日本に不公平と述べている安保条約は、この新安保条約の事を指します。
これ以降、日本は経済復興が叶い国力が回復した後でさえこの安保条約に寄り掛かり、国土はともかく海洋通商路に関しての防衛を米軍に押し付け続けています。
★米国から見た安保負担の変化
では日米安保条約が米国の負担に成ってゆく過程を各時代の流れを見ながら考察してみましょう。
①戦後直後~朝鮮半島危機
まず戦後直後ですが、この時期はGHQが日本に駐留していた時期で、日米安保条約自体は存在していませんでしたが、米軍が日本を我が物顔で闊歩していた事は確かで、土地を強制退去させられたりと当時を知る人にとって余り良い時代では無かったと言われています。
その後、日本が正式に国際社会に復帰してからは、安保条約(旧)が結ばれると、日本を統治していた連合軍の統治機構は無くなり、正式に日本国政府の統治に移行しました。
日米安保条約の当初は、米軍に日本を全面的に守ってもらう事を前提で結ばれていたため、米軍に対して余り強い事を言えないものになっていましたが、朝鮮戦争が起き日本が日本周辺海域を自国の力で守らなくては成らない状況に成り、自衛隊を発足させました。それ以降は、交渉に末に現在の日米安保条約(新条約)が結ばれました。
この頃の米国は、一国で世界の半分の経済力を占めるほどの大国で、自国内で自国の必要とする物資の殆どを調達できる程の大国でした。そのためいちいち遠方まで物資を調達する必要も無く、必然的に安全保障の為には南北米大陸のある西半球の海域さえ安定させればよかったため、ライバルであるソ連を海に出さない様にする軍事ドクトリンを採用し、日本や欧州に軍を置く事で、ソ連勢力が海洋に出てこれない様にするための壁として機能させたのです。
当然、日本列島も米軍を駐留させる事で成立する大陸と太平洋を分かつ壁として機能しました。
②高度経済成長、ベトナム戦争
冷戦も本格化すると、世界各地で米ソの代理戦争が起こり、社会主義勢力の台頭が進む事になりました。本格的にソ連と対立する事になった米国は、日本にも自由主義陣営で活躍してもらうために、対等に近い形で日本とも関係を改善する事になります。
これが1960年に行われた安保条約の改正で、現在でも使われている日米安保条約となります。
ただ当時の日本で安保改正を曲解して受け取った若者たちが社会主義運動を起こし、暴動等が各地で生じると言う現象も起きました。当時を知る安保改定反対派の人達は、今になって「現在条約文を見たら比較的真面」と言う発言を行ったとも言われており、中身を見ずに暴動を起こしていた事が確定しています。
ただしこの社会主義運動の結果、「世界大戦の記憶が薄まっていない時期に日本に再軍備をさせた場合、当時敵国として戦った米国を憎むあまり東側に走る恐れもあるのでは無いか」との疑惑を抱かせたのでは無いかと考えられ、これによって日本は、本格的に軍隊を成立させ軍事負担を被るリスクを遠ざけられたと言えるのでは無いでしょうか?
またこの事から米国にとっての日本は、米軍をアジア展開する上で必要な供給能力を満たしてくれる基地としての側面も持ち始め、海洋アジアで活動する米軍を維持するために無くては成らない国に成り始めたのです。
この結果、日本を壁として共産主義勢力が海洋に出てこれない様にするだけでは無く、海洋アジア全体の安定を維持する負担も米国は被らなくては成らなくなったのです。
③日本の大国化、ドルの石油引換券化
アメリカが世界の海を守らなければ成らない負担を被る事になったのは、冷戦期にドルと金の引換を停止したニクソンショックがその引き金になりました。
元々米ドルは金と一定価格での交換比率が定められており、それが米ドルの価値を支えていましたが、「ドル=ゴールド」の引換が停止された事によって、米ドルの信用が毀損される事になりました。
また冷戦期の軍拡競争による過剰な財政支出によって経済が拡大し続け、ついに米国は自国国内で調達できる資源だけでは米国を養い切れない国家に成ってしまいました。特にエネルギーは深刻で、安全保障の観点から全ての石油を消費し尽くす訳にはいかず、供給先として中東諸国に依存する事になりました。
そして中東の特に最大の産油国であるサウジアラビアとの交渉の末に、石油の販売をドル決済で行う合意を取り付け、ようやくドルの価値とエネルギー供給を安定させる事が出来たのですが、皮肉な事にこのドルの石油引換券化によって、世界中の国が石油を輸入する為にドルを求め、米国の国力以上の通貨価値をドルに与えてしまう事になったのです。
これにより遥々地球の裏側までの全ての海洋ルートを安全に通行できる通商路にしなければ、"ドル決済前提の中東の原油"を購入してくれなくなってしまい、もれなく地球の全海洋を守る負担を背負い込む事になったのです。
この頃から経済と技術を身に付けた日本が大国として台頭し始めました。米国がアジア全域で軍を展開するには、軍を維持する整備供給能力を有する日本が必要不可欠になり、地球の裏側まで行くための中継基地としての性格も帯びる事になったのです。
④冷戦終了から近年
冷戦が終了した後、海洋面においてはロシアの軍事的脅威は去りましたが、米ソ冷戦による団結が消えた世界では、今まで溜め込まれていた民族対立の不満が一斉に噴出し始めました。特に中東はその不満と言う名の火薬庫になり、紛争が絶えない地になり、中東の原油にドルの価値を支えてもらっていた米国は、その抗争に巻き込まれる事になったのです。
また冷戦後期以降から貿易赤字や財政赤字を拡大させ完全に経常収支赤字国に転落し、日本で生じたバブル崩壊の不況により、停滞した経済で貯め込まれたマネーがホットマネーとなり米国を始めとする世界に巻き散らかされ好景気を演出された事により、多くの国が海外依存経済に陥り、貿易決済のために「日本のドル介入で価値が上昇したドル」を使用する世界経済が作られました。
これによって米国は「貿易、生産、消費、ドルの価値の維持」と言ったすべての面で世界に依存するようになり、全世界の治安維持システムを構築しなければ成らない負担を被る事になったのです。
無論日本はアジア全域の海洋通商路に影響を与える重要地域としての価値だけにとどまらず、大量の米国債を有する純資産国として米国経済を支える友好国として確立する事になりました。
⑤現在の米国の対外石油依存脱却
米国では近年に入りシェール革命(硬い岩盤の中にある原油を抽出する掘削技術)が起こり、大量の原油やエネルギーを自国で賄える様になり中東への依存が減りはしたのですが、「世界に巻き散らかしたドル」と「ドルの石油依存」は、いまだに解決されていません。
そのためドルを使用し続けて貰わなければ成らない状況は未だに変わりなく、そのための世界の貿易保護の為の治安維持に割くリソース負担から来る赤字国債の発行は止まりません。
世界の治安を維持する為の軍事支出を止めなければ財政の健全化は成し得ませんし、財政の健全化が成し得ないのであれば通貨と経済のインフレーションも止まりません。
軍事支出と貿易赤字による通貨と経済のインフレが止まらなければ、国民が生きるために安い商品を調達しなければなりませんし、そうなれば更なる海外依存に陥ってしまいます。
そして海外依存に陥れば陥る程、「輸入を安定させるために海洋通商路を守らなければ成らなくなり、世界の治安を維持する負担を支出しなければ成らない」と言う悪循環に陥るのです。
これが現在の米国の軍事負担の現状と成ります。
★かつて米国も行っていた負担の押し付け
いつの間にか世界の貿易の維持負担を押し付けられていた米国ですが、実はこの構図は米国だけでは無く、かつてイギリスが大英帝国だった時代に、米国に押し付けられていた構図にソックリなのです。
当時の英国は「植民地戦争」や「第一次世界大戦」で英国の対外負債が拡大しており過剰な支出を行っていました。
その負債に対処するためにも生産力を拡大する為に各植民地に投資を行っていた英国ですが、当然本国から離れた植民地との貿易を円滑にするために、海上貿易の安定化が必要で、ソレに莫大な投資を行っていました。
結果的に見れば、米国に支えられながら、米国の為に世界の貿易体制守るための負担を被る様になってしまい、その環境下で低コストで利益を上げながら各国を戦争で争わせ破壊する事の出来た米国に資本拡大競争で後れを取り、遂には負債の拡大が維持できなくなった英国は覇権国の座を米国に移譲する事になったのです。
その様な過去米国が行っていた事と照らし合わせても、現在の日本は「"直接"テロ支援や紛争援助を行っていないだけでも温情的」と言えるのでは無いでしょうか?(間接的にそうなる様にコントロールしている可能性は有りますが・・・)
と言いましても日本の場合は「侵略経路の提供を行い米中露の三大国が対立せざるを得ない状況を作るだけで、中露のどちらかが第三国を利用してのテロ支援を行い、米国への負担を掛ける」と思われますので、"日本が率先してテロ支援等を行う必要が無い"と言う前提も有りますが・・・
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今回は記事が長いので二回に分割します。
続きは次回へ・・・
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